15年あまり前の、新任検事の研修

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で、新任判事補の研修の模様が紹介されていて、興味深く読ませてもらっている。短い期間で、効率的に、役立つ研修を行おうという最高裁の配慮が見て取れるし、こういう研修なら、受けているほうも主体的に取り組めるだろうという印象を持っている。
私の場合、検事に任官したのは平成元年4月で、東京地検に配属されて、「新任検事」として1年間勤務した後、徳島地検へ配置換えとなった。新任検事の1年の間に、8か月間刑事部、4か月間公判部に配属され、刑事部にいた期間のうち、4か月は、東十条のほうに当時あった、東京地検第2庁舎(通称「2庁」)で勤務した。そこは、平成2年3月で廃止されて、その後、入管の庁舎になったようで、時々、テレビで、入管関係のニュースの際に旧2庁の建物らしきものが映って、懐かしさを感じることがある。新任検事は、3班に分けられて、4か月ごと、ローテーションで各部をまわっていたので、あわただしい状態ではあった。
当時の東京地検は、旧庁舎で、現在の弁護士会館の場所に建っていた。ロッキード事件田中角栄元首相が、当時の松田検事と一緒に東京地検へ入って行くシーンがテレビで流れることが時々あるが、そこで映るのが、旧東京地検である。その後間もなく取り壊された、老朽化した建物だったので、内部は狭いし(検事一人用の取調室になると、ワープロなどが所狭しと置かれて室内で歩くのも苦労するほどだった)、汚いし、ゴキブリとかも出るので、各部屋にゴキブリホイホイが置いてあったりして、快適には程遠い環境ではあった。しかし、今となると、ああいった小汚い建物のほうがかえって懐かしい。
そういったローテーションで各部を回り始める前に、3日程度であったと記憶しているが、新任検事を東京地検の会議室に集め、講師の話を聞かせる、という形式の研修があった。検事としての心構えとか、証拠品の取扱い実務とか、薬物犯罪の捜査とか、そういったテーマで、入れ替わり立ち替わり講師が登場して説明してくれた。それなりに役立つような話だったとは思うが、内容は全然覚えていない。今の次長検事が、当時、総務部の副部長で、「検事は、取調室にこもってしまうと、たこつぼに入ったタコのようになるので、そうならないように注意した方がいい」といった話をして、なるほど、と思ったのを覚えている程度である。その点は良かったが、次長検事(当時は副部長)の他の話は、退屈でつまらなくて、「優秀な人なのに、話がつまらないな」と思ったのも覚えている。
当時は、現在の新任判事補の研修のような、工夫をこらした研修ではなく、各部に配属する前に、あまりにも無知では(3日くらいの研修をやっても無知には変わりないが)まずいだろう、ということで、申し訳程度に研修を行う、といった感じであった。それが良いかどうかはよくわからないが、研修については、丁寧になるのが最近の傾向のようなので、徐々に改善され工夫されて現在に至っている、ということなのだと思う。現在の新任検事の研修は、もっと充実した中身の濃いものになっているだろう。しかし、時々、法廷で見かける若手検事を見ると、尋問はいまいち、ポイントは突かず、威張ることだけ一人前、検事以上に強気の刑事裁判官の虎の威を借り左うちわ、といった状態で、研修の実があがっているようには見えないが。
ということで、ちょっとした(と言いつつもやや長くなりましたが)思い出話でした。