「どの段階で、どのような基準で引導を渡すのがもっとも人道的なのか」に関連して

小倉弁護士のブログ

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で、10月23日に、上記のようなテーマで論じられており、興味深く読みました。
ロースクール卒業生の司法試験合格率が、2割から3割という状況を、合格率を大幅にアップする方向で変えようとすれば、
1 合格者を大幅に増やす
2 受験者を大幅に減らす
の、どちらか、あるいは双方を実施するしかありません。しかし、合格者を徐々に増やして、ほぼ3000名程度にするということは、弁護士会を中心とする根強い反対を、何とか押さえ込んで合意に至った、という経緯があるはずですから、これを、小幅はともかく、さらに大幅に増やすことは、極めて困難でしょう。
また、受験者を大幅に減らすことについては、中位、下位のロースクールを廃止する、ということになると思いますが、既に、廃止の可能性が見え隠れしているロースクールに入ってしまった学生の問題もありますから、簡単には行きません。2006年に、最初の新司法試験が実施され、結果が出れば、中位、下位のロースクールの相当数が壊滅することが予想され、2007年度以降の学生募集ができなくなるのではないかと私は予想していますが(むしろ、世の中にこれ以上幻想を振りまき犠牲者を出さないためには、そのほうが望ましいとも考えていますが)、2006年に入学した人(3年制)が卒業して司法試験を受験する2009年までは、上記の1,2が、ともに難しいという状況が続くでしょう。
そういった中で、現実的に可能ではないかと思うのは、総合格者の中の、新司法試験と現行司法試験の割り振りを、2009年まで、新司法試験に多めに傾斜して配分するということです。先日の朝日新聞の報道は、この点について、新司法試験への配分が少ないため、ロースクール卒業生の合格率が低くなる、というものであったと私は理解しています。2009年までの新司法試験の合格率を、せめて5割程度まで引き上げれば、司法試験に合格できないロースクール卒業生の続出、という事態は、ある程度防止できるでしょう。
ただ、その場合、現行司法試験受験生に比べて不当に有利にならないために、例えば、次のような措置を講じるのも一計だと思います。すなわち、新司法試験の受験者にも、現行司法試験で実施されている択一試験の受験を義務づけ(憲法民法、刑法の択一試験は、両試験で共通ということになります)、新司法試験で合格枠の中に入っても、択一試験で現行司法試験の合格最低点をクリアしていない者は不合格にする、というものです。そして、そういった措置により、空いた合格枠は、現行司法試験のほうへ回す、ということではどうかと考えます。
いろいろな議論を見ていると、現行司法試験の受験者と新司法試験の受験者の、どちらの質が良いかも論じられていますが、ロースクール卒業者が、現行司法試験の択一合格者の最低点もクリアできないようでは、質が悪いと言われても仕方がないと思います。このような措置を講じれば、現行司法試験の受験者に対しても、新司法試験受験者の合格者数を増やすことについて理解を求めやすいと思いますし、新司法試験の受験者に対しては、現行司法試験受験者と、択一試験のレベルでは競い合わせつつ、しっかり勉強してもらうことになりますから、教育的効果も期待できるでしょう。