「伝説の特捜検事が語るー平成重大事件の真相」

 

東京地検特捜部長の熊崎勝彦氏は、惜しくも今年5月に逝去されましたが、生前、元NHK鎌田靖氏とのこの対談を出しており、遅ればせながら読んでみました。

昭和末から20世紀終わり頃までの、東京地検特捜部が手掛けた著名事件が振り返られており、当時の特捜部の内幕や熊崎氏の思いといったことが率直に語られている箇所も随所にあって(保秘に関わるところは鎌田氏に問いかけられても語っていないところもありますが)、私自身、過去の事件を思い出しつつ、頭の中を整理しつつ読みました。

捜査に対する考え方、進めるにあたっての手法は、検察内ではよく語られるものであってもなかなか対外的には語られないもので、そういったことが、本書内の随所で熊崎氏によって語られているのも類書にないものでしょう。

本書の最後で熊崎氏が総括的に語っていることが、今となっては遺言のようにも思われ、検察が、刑事司法が、今後、どのように展開していくかについて、熊崎氏の思いがどう生かされていくのかという印象を受けるものがありました。

生前にお会いする機会がありませんでしたが、熊崎氏のご冥福をお祈りします。