「公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動」

 

 公安調査庁と言っても、ほとんどの人は何をしているのかわからず、多少知識がある人でも、破壊活動防止法に基づき対象団体の調査等を行っているところ、程度の印象しかないのが普通でしょう。最近は、オウム真理教やその後継団体の関係で取り上げられることが多く、そういうイメージの人も少なくないかもしれません。

私自身、公安調査庁で勤務したことはないのですが、冷戦が終わりリストラ寸前だったのがオウム真理教の関係で多少息を吹き返した程度の印象しかなかったのが、この本を読んで、現代の日本にマッチした情報機関としてその存在感を増しつつあることを知り、目から鱗が落ちる思いがしました。

アメリカのように情報機関による活動が活発な国でも、9.11テロを阻止できなかったように、民主主義体制を破壊しようとする人、組織、企てを阻止するためには適切な機関による活動が欠かせません。そこが不十分であると指摘されてきた日本で、公安調査庁が果たすべき役割には大きなものがあるでしょう。

本書の中でも指摘されていましたが、そういった活動には、常に、暴走や人権侵害の危険性が伴うものであり、今後は、国会による実効性のある監視体制もきちんと確立していくことが不可避であるということも強く感じました。