原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

昨年出たのを割とすぐに購入して読んでいたのですが、最近、読み終えました。戦後70年から71年目の初頭にかけて読んだことになりますが、時代の節目で読んだという気がしています。
原爆など戦災の犠牲者は、何万、何十万といった「数」で括られて語られがちですが、当然、個々の人々にはかけがえのない命、人生があったもので、その親族など関係者にとってもかけがえのない人であったものです。無名の人々は、歴史の中で忘却されていきますが、そういったところに光を当てた本書は、地味ではありますが日本にとって重要なところを丁寧に紹介しているもので、意義深いものがあると思います。
先日、実家の母と電話で話していた際、原爆投下当時に広島逓信局勤務の技師で入市被ばくの影響で翌年の昭和21年4月に亡くなった祖父の話になり、既に亡くなった祖母が、祖父が「泣きながら死んだんよ」と言っていたという話を初めて聞きました。母はその月から小学生(まだ国民学校だったのでしょうか)、上にまだ未成年の息子、娘が3人いて、妻子を残して40代の若さで亡くなった祖父の無念さが思いやられました。勇ましい、日本が打って出て世界を平和に、といった高揚した話をする前に、現在の日本が、日本国憲法が、こうした幾多の犠牲、無念さの上にあることを、国力を顧みず打って出た結果どういう悲惨なことになったかということを冷静に見つめなければならないと思います。