佐藤栄作逮捕を「幻」にした政権と特捜部で交わされた密約

http://getnews.jp/archives/1120013

汚濁した政界に向けて振り上げられた検察の正義の刃が不当な指揮権で折られ、検事たちは悲嘆にくれたこれが巷間伝えられてきた“正史”である。

特捜部は当時、イケイケで突っ走ったものの、実は穴だらけの粗雑な捜査であり、佐藤逮捕に踏み切っても公判維持すら難しかった。そこで当時の検察幹部が政権側に接近し、指揮権発動を誘発して捜査中断を演出した。にわかには信じ難いかもしれないが、これを裏づける有力な傍証はいくつもある。

造船疑獄当時の話は、私も本で結構読みましたが、捜査がかなり乱暴で雑な認定で起訴されていたと証言する、当時の関係者が複数いて、実際に無罪や認定落ちも結構出ていて、上記のような、指揮権発動の内幕については、そうであった可能性が高いだろうと感じています。
例えば、昭和の終わりに検事総長を務め、造船疑獄当時に捜査にも加わっていた伊藤氏は、

検事総長の回想 (朝日文庫)

検事総長の回想 (朝日文庫)

で、主任検事だった河井信太郎氏について、(記憶で書いているので若干表現が異なるかもしれませんが)捜査官ではあっても法律家とは言えなかった、と厳しく批判していましたし、

戦後史開封 昭和20年代編 (扶桑社文庫)

戦後史開封 昭和20年代編 (扶桑社文庫)

でも、その後検察高官になった、当時の捜査陣にいた検事の述懐として、捜査の杜撰さが紹介されていて、確か伊藤氏が書いていたと思うのですが、捜査会議では、河井氏をはじめとする強気の、威勢の良い意見が次々と開陳され慎重論、消極論は顧みられず、かなりひどい状態だったことが振り返られていました。伊藤氏だったかその検察高官だったか記憶が曖昧なのですが、起訴しても有罪にはならないと、捜査会議で泣きながら意見を言う検事がいたのに起訴になってしまい、結局、無罪になってしまった件もあったとのことで、かなりひどい状態であったのだなと読みながらあきれた記憶があります。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20091107#1257575663

でちょっと紹介した、「戦後史開封」で紹介されているエピソードでも、強引な認定、起訴で有為な人材の将来を大きくねじ曲げてしまっていて、無理な捜査が指揮権発動を招いたことが強くうかがわれるものがあります。
当時の状況について、参考になると思ったものとして、他に

検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)

検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)

指揮権発動―造船疑獄と戦後検察の確立

指揮権発動―造船疑獄と戦後検察の確立

があります。興味ある方は読んでみてください。