V9の川上哲治元巨人監督が死去 93歳

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2013/10/30/kiji/K20131030006912180.html

MVP3回、首位打者5回、本塁打王2回、打点王3回のタイトルを獲得し「打撃の神様」の異名を取った。通算18年で2351安打を放ち、生涯打率は3割1分3厘。

特に65年からの9連覇(日本シリーズも)は球史に輝く金字塔で、巨人軍第3期黄金時代を築いた。

私は、川上氏の現役時代の姿は見たことがなく、印象に残るのは、「常勝」巨人の監督としての姿ですね。長島、王などV9戦士が揃った当時の巨人は、実に強く、それに対して、広島カープは歯が立つような状態になくて、広島市民球場へ行って巨人戦を観戦すると、カープファンの「あーあ」というため息がよく聞こえていたことが思い出されます。
それだけに、自分なりに川上氏への関心があって、本も読みましたが、印象に残っているのは、

父の背番号は16だった (朝日文庫)

父の背番号は16だった (朝日文庫)

でした。
坐禅」のほうは、禅に傾倒し、シーズンオフには、禅寺へこもって坐禅に取り組んでもいた川上氏の、禅への取り組みを赤裸々に紹介したもので、よく禅問答、と言われますが、考えに考え抜いて、あることがわかった時のうれしさ、喜び、といったことが綿々とつづられていたりして、川上氏のメンタル面での強靭さを支えるものを垣間見たような思いがしたものでした。
「父の」のほうでは、息子である著者の視点から見た川上氏の姿が描かれていて、常勝で勝ち誇るのではなく、勝利への飽くなき執念を持ちつつ、それだけに様々な重圧やファンの罵声に苦しみ、監督退任時には、あれだけの実績を残しつつも巨人から冷たくあしらわれ、その後の長島巨人の惨状(1年目に最下位)を心配しつつもアドバイスもできずに悶々とする姿が赤裸々に描かれていて心打たれるものがあったことが思い出されます。
栄光と勝利に彩られた川上氏の生涯でしたが、それを支えたのは、同氏の努力であり家族の支えであった、ということを感じますし、こういう卓越した野球人は、今後、出ることはないのではないか、川上の前に川上なく川上の後に川上なし、ということをしみじみと感じます。
御冥福をお祈りしつつ、今後も川上氏の足跡を折に触れ振り返りたいと考えています。