詐欺の立件、「故意の立証」が焦点

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130618/crm13061821450013-n1.htm

警視庁は、安愚楽牧場が顧客に虚偽の説明をして出資を勧誘したとする特定商品預託法違反罪を適用し、経営陣の立件に踏み切った。ただ、より量刑の重い詐欺罪での立件には、虚偽説明が顧客をだます意図で行われたかどうかの「故意性の立証」が焦点となる。

従来、こういった案件が詐欺事件として立件される場合は、やっていると称している事業の実態がまるでなかったり、ほとんどなかったり、というものが多かったと言えるでしょう。したがって、騙す側としても、金は返せないし返すつもりもないとわかった上での犯行ということが立証しやすい、そういうものが立件されてきたと言ってよいと思います。
安愚楽牧場のケースでは、報道を見る限り、確かに特に近年は自転車操業の繰り返しで、その間に、様々な嘘がつかれていたようですが、曲がりなりにも事業としての実態は存在し(牛が何千頭もいて)、上記のような詐欺を「実質詐欺」とすれば、金を返すつもりはあるものの(少なくともそこは否定しにくいものの)、投資者の投資判断に影響を及ぼす重要部分で欺いた、という、実務上言われる「形式詐欺」が問題になるケースで、投資者の投資判断に影響を及ぼす重要部分で欺いていたと言えるか、その点の故意があったか、それらが肯定されるとして会社内のどの範囲の人々の間でそういった点への認識が共有されていたか(故意、共謀)といったことが、微妙に問題になるのではないかと推定されます。そうであるが故に、一種の形式犯(顧客に虚偽の説明をして出資を勧誘したこと自体で成立する)特定商品預託法違反罪で事件へと入り、出口としては、詐欺罪による立件、起訴を目指しつつ、詐欺罪が成立する要件を満たすかどうか、慎重に見極めようとしているのではないかと推測されるものがあります。
この種の事件を、生活安全部が手掛けると、無謀に当初から詐欺罪で立件し、事件がまとまらなくなって頓挫、ということが起きがちですが、これだけの大規模な事件で、やってみましたが駄目でした、で済むものでもなく、警視庁としても、詐欺罪捜査のプロ集団である捜査2課に担当させ、慎重の上にも慎重を期しているのでしょう。
今後の捜査の進捗が注目されます。