麻薬特例法違反ほう助:容疑で2ちゃんねる元管理人を書類送検 薬物売買の書き込み放置

http://mainichi.jp/select/news/20121221ddm041040054000c.html

送検容疑は、規制薬物の売買に関する投稿が「薬、違法」と題する掲示板に横行している状況を放置し、結果的に覚醒剤の密売を助けたとしている。密売した無職の男(55)=麻薬特例法違反(あおり、唆し)などの罪で有罪が確定=は、昨年5月に覚醒剤の売り込みを投稿したとして立件されている。
元管理人は、09年に著書などで「2ちゃんねるシンガポールの会社に譲渡した」と説明しているが、警視庁は現在も運営の決定権をもつとみている。

こうした、インターネット上における「場」の提供者が、提供された側の違法行為について、いかなる責任を負うか、ということは、インターネットの利用者が増え違法行為も増えるにつれ激しく議論されてきたものです。民事責任については、いわゆるプロバイダ責任制限法により、場の提供者が負うべき責任が限定され、手当てされましたが、刑事責任については、日本でそうした法律がなく、明確な基準がなく曖昧なまま現在に至っている、という状態です。刑法の理論で、「不作為犯」の刑事責任が問題になりますが、この問題は、不作為犯(場の提供者が違法行為に対して作為に出なかった)の問題でもあります。
場を提供している、という立場で、不作為が刑事責任を問われるまでに達していると評価されるには、単に、違法行為を認識しながら何もしない、では足りない、と考えるべきで、その場自体で違法行為が頻繁に行われその場を運営していること自体が違法行為を助長しているといった事情があり、運営者がそのような実態を十分認識し削除が容易でありながら敢えて削除せず放置する、といったことがあって、初めて刑事責任が問われ得るのではないかと私は考えています。
上記の記事の件の、事実関係がよくわかりませんが、報道によると、この掲示板では、削除人という立場の人々が存在していたとのことであり、削除人と「元管理人」との関係がどうであったか、それらの人々(特に「元管理人」)が問題となった掲示板の実態をどの程度把握していたか、違法とされた個々の具体的投稿がいかなる内容であった、いったことを慎重に見る必要があり、刑事責任を軽々に認定できるような事案ではない、と思います。
ただ、こうした掲示板の存在が、インターネット紛争を常に深刻なものにする存在であり続けているのも事実で、インターネットがこの世にある限り、我々が抱えて苦しみ続けなければならないもの、長い道を歩むに当たり常に背負っている重い荷物のようなものであることも事実でしょう。悩ましく、有効な解決策が見出しがたい問題です。