東京電力女性社員殺害:右胸など付着物DNA型、第三者と一致 高検、鑑定一部開示

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111022ddm041040013000c.html

弁護団によると、今回結果が出たのは、(1)口や唇の周辺(2)左胸部周辺(3)右胸部周辺(4)陰部(5)肛門周辺−−の付着物5点。弁護団は(4)(5)については「第三者の型とおおむね一致した」とし、(3)については「別の鑑定方法で一致した」という。(1)と(2)については「型がはっきりしない部分もあり評価は控えたい」とした。
再審請求審では、東京高検が9月、被害者の胸部に付着した唾液とみられる液体や陰部、肛門の周辺の付着物、首の微物などの試料計42点を新たに弁護団に開示。右胸部の付着物は、捜査段階の鑑定でもマイナリ受刑者の血液型(B)の反応は出ておらず、弁護団は開示を受け「受刑者の犯人性に疑いを生じさせる新しい重要証拠」とする意見を東京高裁に提出した。42点のうち弁護団が同意した15点について、東京高検が先行して鑑定を実施。今回の結果は弁護団の主張を補強するものとみられる。
今回の鑑定とは別に、高検が7月に開示した鑑定結果でも精液の型はマイナリ受刑者のDNA型と異なり、現場のアパート室内に落ちていた3本の体毛と同一とみられるか完全に一致していた。

この事件については、以前に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110726#1311685914

とコメントしましたが、上記のような、その後の新たに判明した鑑定結果を踏まえると、殺害があった室内に第三者が存在した痕跡がある、というだけでなく、マイナリ受刑者が、被害者と身体を接触させた形跡がない、ということも、再審開始、無罪方向に働く事情になるのではないかと思います。
逆転有罪とした東京高裁判決では、殺害直前、被害者は犯人と性交し、その犯人がマイナリ受刑者と認定され、室内のトイレから発見されたコンドーム入りの精液(マイナリ受刑者のものと確認されている)は、激しく争われたものの(もっと前の性交時のものと反論された)、犯行当時に遺留されたものと見て矛盾はないという鑑定結果が支持されていました。
しかし、上記の記事にもあるような鑑定結果によれば、確定判決を前提にすると、マイナリ受刑者と性交する前の、別の第三者に関わる痕跡は、被害者の身体から次々と発見、確認されているのに、マイナリ受刑者に関わる痕跡は、被害者の身体から、一切、発見、確認できないということになり、あまりにも奇異で、常識的に考えて説明がつかないということになるのではないかと思います。コンドーム入りの精液も、上記のような意味での「矛盾はない」という程度の証拠価値しかなく、積極的に、犯行当時にマイナリ受刑者が犯行現場にいた証拠という位置づけにはなっていません。
逆に言えば、今後、鑑定を行う中で、マイナリ受刑者に関わる痕跡が発見、確認できるようなことが、もし起きれば(その可能性は低いようですが)、それは確定判決を大きく支える方向に働くことにはなるでしょう。
裁判所としては、できる鑑定はやり尽した上で、新証拠を、確定判決の証拠構造の中に位置づけて、再審開始の可否を決するしかないと考えているのではないか、徹底した鑑定を行い第三者との接触の痕跡は見出される一方でマイナリ受刑者が被害者と接触した形跡が何ら見出せないのであれば確定判決に決定的かつ合理的な疑いが生じるのではないかと、私は推測しているのですが、今後の展開に注目したいと思います。