http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110511-00000019-mai-soci
両被告はいずれも一貫して無罪を主張、清徳丸のGPS(全地球測位システム)機器が水没してデータを復元できなかったことから、同船の航跡が最大の争点となった。
検察側は、清徳丸後方を航行していた僚船船長らの証言などを基に、衝突に至るまでの航跡図を作成。海上衝突予防法に基づき、清徳丸を右方向に見る位置にあった、あたご側に衝突回避の義務があったと主張した。
弁護側は「検察側の航跡図は真実と全く異なる」と批判し、海難事故の専門家に依頼して独自の航跡図を証拠として提出。「あたご後方を通り過ぎるはずだった清徳丸が、衝突直前に大きく右転・増速したことが事故原因」と反論した。
判決は、検察側航跡の根拠とされた僚船船長らによる「清徳丸は(僚船の船首から)左約7度、距離約3マイルに位置していた」との供述について「僚船船長は(検察官に)図面を指して『前方やや左にいた』とは言ったが自分から『7度』とは言っていない」と指摘。「恣意(しい)的に船長の供述を用いている」と述べ、調書化した供述の信用性を否定した。
さらに長岩被告らの供述を基に、独自に航跡を特定。被告側の監視も不十分だったことなどを認めつつ、清徳丸が右転しなければ危険は生じず、直前になっても回避行動を取らなかったと指摘した。
検察立証の柱になるべき、想定した航跡が否定されてしまっては、到底、有罪判決は無理でしょうね。公判では、漁船側が衝突直前に大きく右転・増速」したかどうかも問題になっていたようですが、判決では、その点も認定され、イージス艦側の予見可能性や結果回避可能性が否定されたようであり、そもそも、起訴自体に無理があったのではないかという批判を受けてもやむを得ないでしょう。航跡を供述により復元するという方法に、大きな疑問を感じます。
判決文を見ていないので、コメントは感想程度になってしまいますが、人命が損なわれた、社会的な影響も大きい、重大な事故であったにもかかわらず、捜査や立証がお粗末であった、という印象を強く受けるものがあります。それだけに、控訴できるのか、控訴して原判決が見直される可能性があるのか、かなり厳しいものも感じられ、今後の横浜地検の対応が注目されると思います。