http://www.nhk.or.jp/news/html/20101024/t10014789551000.html
NHKでは、最高検察庁が、おととし、取り調べのメモについて全国の検察庁に出した通知とその解説文を入手しました。この中で、最高検は、検察官が裁判で必要ないと判断したメモは速やかに廃棄するよう指示していたことがわかりました。解説文で、最高検は「必要性の乏しいメモを安易に保管しておくと、メモを開示するかどうかで無用な問題が生じかねない。裁判所が取り調べの状況について判断するうえで必要なメモは保管し、それ以外のメモは、プライバシー保護などの観点から速やかに廃棄すべきだ」としています。
ツイッターでもちょっとツイートしましたが、当初から起訴時まで、被疑者が一貫して自白していたように見える事件でも、公判になって争われ自白の任意性、信用性が問題になる、といったことが起きることがあります。取調べが適正に行われているのであれば、そうであるからこそ、取調べ時のメモは、適正さを裏付けるものとして貴重であり、検察官が自分勝手な判断で「必要ない」と即断して安易に捨てる、ということはできないはずです。安易に保管する、という発想自体がおかしく、安易に捨てることこそ戒められるべきでしょう。もちろん、これは取調べが適正に行われていることが前提で、そうでなければ、安易に保管するな、ということになります。
最高検の通知文書の全文は、記事でも紹介されていませんが、報道を見る限り、そういった健全な問題意識は垣間見ることすらできず、むしろ、取調べに関する問題を「無用な問題」として、取調べメモなどないほうがよいと、廃棄を推奨していたとしか読み取れません。そもそも、裁判所が判断すべき必要性を、勝手に判断するという独善性、傲慢さは大いに問題で、強く非難されるべきでしょう。
最高裁の判断で、取調べメモも証拠開示の対象になることが確立した判例になっているにもかかわらず、最高検が、このようなふざけた通知を発していたことは、取調べメモの廃棄が、検察庁による組織ぐるみの証拠隠滅として行われていたことを裏付けるもので、極めて重要かつ深刻な意味を持っていると思います。
こういった組織的な隠ぺい構造の中で、大阪地検における証拠改ざん、犯人隠避事件も起きている、それを捜査していたのが、よりにもよって最高検である、ということは、この問題の根の深さを浮き彫りにするものと言えるでしょう。