私は、早稲田大学法学部に入学した直後から、緑法会という、司法試験等の国家試験を目指す学生が集まったサークルに入り、そこで勉強できたこともあって、比較的早く司法試験に合格することができました。
その緑法会では、私が在籍していた当時から、夏(8月下旬から9月上旬)には合宿を行い、2年生と1年生でゼミ形式で勉強し、そこに3年生以上も加わるなどして教えることもあり、締めくくりに顧問の教授出題による答案練習、解説を行うという、かなり念の入ったものでした。
最近、何度か、その夏合宿に私もOBとして顔を出していましたが、今年は行わなくなったという連絡を、数日前に受け、最近の夏合宿が、勉強はせず、遊びと、OBの話を聞くだけのものになっていたことから、やむをえないだろうと思うとともに、法科大学院を経て司法試験を受験する状況における、法曹を目指す法学部生の学生生活というものは、なかなか難しいものなのだろう、という印象を改めて受けました。
私が法学部生の頃は、教養科目について単位を取った後の大学3年生から司法試験(第2次試験)を受験でき、早くから受験を志している人は、その多くが3年生から受験していて、そういった人は、大学2年生の夏になると、来年の今頃は既に択一試験も論文試験も終わっていて、自分も、せめて論文試験まで受験するくらいにはなっていたいと思っていたものでした。そういう雰囲気の中で、上記のような緑法会の夏合宿も行われていて、かなり緊張した状態で、参加者が真剣に勉強していて、そういった中に、3年生、4年生で、択一試験に合格し論文試験まで受験したような、実力者の先輩(イメージとしては、「ハゲタカ」に出てくる鷲津のような感じかもしれません)が入ると、緊張感がさらに高まるとともに、自分も早く実力をつけ、択一試験をクリアし論文試験を受けられるような状態になって、合宿にも参加したいなどと思ったことが思い出されます。
現在のように、法学部を出た後、法科大学院で2年から3年学んで司法試験を受けるということになれば、大学2年生程度では、また、大学3年生、4年生であっても、昔の私が大学2年生以降、感じていたような切迫感、緊張感を感じつつ勉強しろというのは、かなり無理があるでしょう。とはいえ、最近の夏合宿に顔を出した際に見た、勉強せず無邪気に遊び興じている学生を、昔の緊張感に包まれた学生と対比しつつ思い出すと、今の学生たちはこのままで良いのかと、正直、疑問を感じずにはいられないのも事実です。
学生生活というものは、本来、楽しいもののはずで、私のように、自分を徹底的に追い詰め苦しみ抜いて司法試験を目指すような学生生活は決してお勧めできませんが、法曹を目指すということは、制度が変わり合格者が増えても、やはり厳しい道に身を投じることであり、法学部時代に遊んで暮らしてしまったことが、その後、尾を引き、法科大学院には進学できても、鳴かず飛ばずという状態から脱出できず本懐を遂げられないことにつながってしまう可能性は高いでしょう。その意味で、法曹を目指す法学部生の学生生活について、新たなモデルのようなものが、今後、確立されなければならないのではないか、という気もします。