小日本主義―石橋湛山外交論集

小日本主義―石橋湛山外交論集

小日本主義―石橋湛山外交論集

石橋湛山は、早稲田大学出身の政治家で、戦前は、東洋経済新報で数々の論文を発表し、戦後は政界に転じ、短期間でしたが総理大臣も務めています。
一昨日、六本木ヒルズ森タワー内の青山ブックセンターに立ち寄ったところ、レジの横にこれが並べられていて、早速、買いました。読んでみると、最新刊ではなく、1984年に第1刷が出て、1990年(バブル期の真っ直中ですね)に第2刷が出ていて、こういった堅くて売れそうにない本を、限られた店内スペースの中で並べて売っている青山ブックセンターは、高く評価できると思いました。
石橋湛山は、有名な小日本主義を提唱し、戦前の日本において、無謀な膨張、植民地政策を鋭く批判する論陣を張り続けたものの、孤立無援状態のまま日本は壊滅的な打撃を受け終戦を迎え、石橋湛山の主張が生かされることはありませんでした。しかし、改めて読んでみると、例えば、有名なロンドン軍縮条約をめぐる統帥権干犯問題について、条約により財政上の多大なメリットがあることを指摘し統帥権干犯論に敢然と反論したり(今とは違い2・26事件が起きる直前という時代状況の中で)、日本の植民地政策に経済的なメリットが出ておらず小日本主義こそ日本が採るべき道であることを力説したりと、今読んでも、その主張には説得力があり、文章も力強く、読みやすく、非常に勉強になるものがあります。
石橋湛山というと、仏教、日蓮宗という印象が強烈にありましたが、この本の解説を読むと、幼少時にキリスト教の影響も強く受けていて、日蓮とキリストを足して2で割ったような人だったのかもしれないと思い、何となく納得するような気持ちになりました。
危機的な時代において、人としていかに生き、いかに自らの主張を貫いて行くかといったことを考える上でも、石橋湛山には学ぶところが多いという印象を改めて受けました。