明石歩道橋事故の遺族 検察審査会に3度目申し立てへ

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090510/trl0905101931001-n1.htm

21日には、業務上過失致死傷罪で不起訴処分となった当時の明石署副署長(61)について、神戸検察審査会に3度目の不起訴不当の申し立てを行う。
これまで検察審査会の議決には法的拘束力がなかったが、21日施行の改正検察審査会法では、検察審査会が2度「起訴相当」を議決すれば、裁判所指定の弁護士が容疑者を強制的に起訴できる。
業務上過失致死傷罪の時効は5年だが、申立代理人佐藤健宗弁護士はシンポジウムで「起訴された同署の元地域官は上告中で、『共犯者の裁判中は時効が停止する』と定めた刑事訴訟法の規定により時効は成立していない」と説明した。

特に問題になるのは公訴時効の成否という点でしょうね。
刑事訴訟法では、

第254条 
1 時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
2 共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。

と定められ、上記の記事で言われているのは、2項を指しています。ただ、過失犯についても共犯というものは想定できるとされていますが、故意犯に比べ、共犯が成立する範囲は狭く、明石の事故でも、起訴された者との共犯関係(共同正犯等)を肯定できるかということになると、微妙ではないかという印象を受けます。その点は、もし、検察審査会による起訴相当という決議を経て起訴ということになった場合、慎重に検討を加えておく必要があるでしょう。
ちなみに、刑事訴訟法254条2項については、誤起訴により真犯人ではない者が起訴された場合、真犯人について時効が停止するか、という問題があり、肯定説と否定説がありますが、否定説が有力であるようです(私が見たところ、松尾、田宮が否定説でした)。
ただ、肯定説に立つと、足利事件については、再審無罪となった場合、起訴から確定判決に至るまでの期間がかなり長く、

足利事件足利事件の経過
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090509/trl0905090224008-n1.htm

によると、発生が平成2年5月12日から翌13日、起訴が平成3年12月か翌平成4年1月、上告棄却が平成12年7月で、時効停止により15年(改正前の公訴時効期間)はまだ経過していないことになり(正確にはわかりませんが、現時点で5年余り残っている計算になります)再捜査の余地が生じるという考え方もあり得ます。