強制捜査は「当然」 調書漏えい事件で長男の祖父語る

http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070922/jkn070922001.htm

先日、奈良地検強制捜査に着手したということで、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070914#1189722991

とコメントした件ですが、「少年」側の被害感情はかなり強いようです。

「なぜ少年審判が非公開なのかを考えてほしい」。祖父の言葉には、当事者の1人としての切実な思いがにじむ。一方、専門家の間には「著作や出版の萎縮(いしゅく)につながる」と疑問視する声も。強制捜査着手から21日で1週間。事件はいまだ「少年の保護」と「言論の自由」のはざまで揺れている。
「本には、孫の成績や、婿の離婚と再婚の経緯など、プライバシーも含めて暴露されている。孫が中等少年院を出た後、本を読んでどう思うのか」。祖父はやりきれない様子で語った。

秘密漏示罪の主体は、医師等の、構成要件の中で列挙されている一定の専門職の人々であり、今回の事件における「著者」は、同罪との関係では、あくまで共犯としての責任が発生する可能性がある、という立場になります。出版行為自体に犯罪の嫌疑がかけられているわけではなく(密接に関連してはいますが)、そこは整理して見て行く必要があるように思います。
犯罪の成否は、証拠関係に接していないので何とも言えませんが、私の感覚では、仮に医師等の関係者からの情報提供があったとしても、家裁における審判後、まだ日が浅い上、「少年」自身も少年院に収容中という状態で、関係者のプライバシー等への配慮を超えて、情報提供、公開へ踏み切るだけの「正当な理由」があるとまでは言い難いのではないか、と思います。その意味で、著者を含め、やや「早まってしまった」という面があるのではないか、というのが、あくまで感覚的なものですが、私の見方です。ある程度日時が経過してこの種の書籍を出版する場合であっても、関係者のプライバシー等に配慮し、その同意を得たり、内容を工夫するなど、犯罪の成否とは別の問題として、慎重な姿勢も必要ではないか、と思います。
表現の自由が最大限尊重されるべきであることは当然ですが、プライバシー等への配慮も必要であり、合法、違法の境目をどこに見出すべきか、ということを考える上で、本件は様々な検討材料を提供しているように思います。