「帰省する親子の姿思い初心に」

 昨日の朝日新聞夕刊に、全日空のディスパッチャー(運行管理者)である吉野勝美氏を紹介する記事があり、その中で、吉野氏の、

 台風が九州に近づいていた。夜勤明けの空港ロビーで、お土産をいっぱい抱えてうなだれる親子連れとすれ違った。若い母親が小さな娘を諭している。「天気が悪いから帰れないね。あきらめようね。」
 その瞬間、「自分が欠航を決めた便だ」とわかった。ふるさとには孫の帰りを待つ祖父母がいる。お盆でどの便も満席、もう帰れないだろう。「あの判断は本当に正しかったのか」。何度も自問自答した。無機的に下した運行判断の裏に、無数の人間の姿があると知った。仕事に疲れた時、30年前の切ない夏を思い出して初心に帰る。

という体験談が紹介されていました。
 プロとして業務に習熟してくると、とかく、上記のような「無機的な」判断に陥りがちですが、その判断の裏に、様々な人間の姿がある、ということを肝に銘じ、初心に帰る必要性ということを、改めて痛感し、非常に参考になる記事でした。
 吉野氏の「厳しい局面こそ謙虚になれ」「備えは綿密に判断は瞬時に」という「法則」も、参考になると思いました。
 こういう記事を読むと、多くの読者は、こういう人が運行に携わっている全日空に乗りたい、という気持ちになるでしょう。この記事が、宣伝目的で作られているとは思いませんが、こういうところで、自社の社員をさりげなく登場させる全日空は、危機的状況にあるどこかの航空会社に比べて、やはり、うまいな、と思わずにはいられませんでした。