政党ビラ配布で起訴の男性、保釈に 東京地裁が決定

http://www.asahi.com/national/update/0114/040.html

八王子支部で無罪になった事件(第1回公判後に保釈)よりも、保釈が早かったのは、八王子の事件が共犯事件(と言っても根が深い共犯事件とも言えないですが)であったのに対し、本件が、報道を見る限り単独犯である、ということも影響しているように思います。
裁判所としても、いつまでも保釈を認めず「人質司法」だ、という批判を回避したいという思惑が働いているかもしれません。
この種の事件の問題点については、八王子の事件に関連して、このブログでも何度か述べましたから、興味のある方はご覧下さい。

防衛庁官舎で「派兵反対」のビラ、3被告に無罪判決」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041216#1103183769
自衛隊イラク派遣反対ビラ訴訟の判決文を読んでみて」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041223#1103794546
「私的と公的の間」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041229#1104253701

「私的と公的の間」で、私は、

無罪になった事件についても、上記のような、「私的領域」としての性質を鮮明化、明確化するに至ったにもかかわらず、無理にそういった領域に入り込む」といった事情が(実際にあるとした場合であるが)きちんと立証されていれば、有罪になったかもしれない。今後、控訴審で、検察官は、「管理者の意思に反する立ち入り行為は、それ自体が違法性が高く可罰的違法性を帯びる」といった、形式面からの立論と、上記のような意味での実質論からの立論の、両面から攻めて行くだろうと私は予想している。

と述べましたが、今回の事件の報道で、

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050112/mng_____sya_____006.shtml

東京地検は起訴の理由について「具体的な事実関係から違法性が高いと判断した。住民がどれだけ不安を覚えたかという処罰価値も考慮した」としている。

とされているところを見ると、最終的に裁判所で認められるかどうかはともかく、検察庁としては、上記の私の指摘のような事情をかなり意識して、証拠収集の上、起訴に至っている可能性が高いと思います。
また、おそらく、八王子支部での無罪事件については、東京地検八王子支部を中心として、警視庁公安部とも緊密に協力しつつ、上記のような観点(違法性の高さとか住民の不安感など)から、猛烈な補充捜査を行っていることは、ほぼ間違いないと思います。
今後、両事件で、検察庁がどういった立証を行ってくるか、非常に注目されるところです。