ロースクールについて(その他の感想3)

いろいろと、有益なコメントをいただいており、それらについて、私なりの意見を述べたいと考えていますが、その前に、「今、私がロースクール生であれば、どう勉強するか」という観点から検討してみたいと思います。
私は、昭和61年、早稲田大学法学部4年生の時に司法試験に合格し、その後、2年間の修習を経て実務家となり、15年余り経過しており、そういう経歴の人間の経験等を踏まえたものということで見てください。
1 ロースクールで初めて法律を学んだ場合
 与えられた期間は3年間です。私なら、自分の学習計画として、
1年目・・・憲法行政法含む)、民法、刑法について、基本書を精読して一通り回す
2年目・・・商法、訴訟法(民、刑)について、基本書を精読して一通り回す
3年目・・・選択科目について基本書をマスターし、法律科目全体について知識をレベルアップしつつ、問題演習等の試験対策を行う
とします。ロースクールの講義等は、単位を取得し受験資格を得るためのものと割り切り、有益で利用できるものは徹底的に活用し、そうでないものは単位が取得できる最低限度の労力をかけるだけにします。
 勉強する上での情報源としては、六法のほか、①定評のある基本書(多くの受験生が使っているもののほうが、何かと都合がよく望ましい)②判例百選と、③サブテキストとして、予備校が出しているテキストで、あまり厚すぎずわかりやすそうなものを1種類選び、基本的にはこの3つを徹底的に読み込みます。黙って座って読んでいるだけでは、なかなか身に付かないので、ロースクールの講義(使えそうなものであれば、ですが)、自主ゼミ(指導者として最終合格者とか択一合格レベルの実力者がいるのが望ましいが仲間だけも可)など、利用できるものは利用します。
 予備校の講義についても、評判が良く参考になりそうなものは、利用してみるのも悪くないと思います(ただ、通学はきついと思うので、何人かで共同してテープを購入して利用するなど、工夫が必要でしょう)。
 「ロースクールか予備校か」といった議論は、学者とか、司法試験に既に合格した実務家とか、そういった人に任せておいて、勉強のために有益なものであれば、何でも利用するというどん欲な姿勢が必要だと思います。
 上記の3種類の情報源(基本書、百選、予備校テキスト1種)以外は、読んでも、必ずこの3つに戻ってくることを心がけ、サブノートは時間がかかりすぎるので作成せず、必要なことは、この3つに書き込むか、メモをはさんでおく程度にします。
 最初は、なかなか身に付きませんが、次第に理解できるようになってくると、あるところで、一気に理解が進む、という感覚を感じることになります。法律学の理解度は、「右肩上がりの直線」と言うよりも、あるところまではなかなか離陸できない飛行機のような感じで、あるところまで行くと、はずみがついて跳ね上がり、その後はぐんぐんと上がって行く、というイメージではないかと思います。
 3年目に問題演習等の試験対策、としましたが、それまでであっても、司法試験過去問の中の事例問題や演習問題(「法学教室」に毎号出ているようなもの)に、できるだけあたってみて、論点抽出能力などをつけるようにするのが良いと思います。
2 既に法律を学んだ上で、ロースクールに入っている場合
 与えられた期間は2年ないし3年です。2年履修の人は、あまり時間がありませんから、やるべきことを迅速、的確に行う必要があります。
 まず、各自のこれまでの勉強の程度を前提に、上記の「1年目、2年目」の作業を行います。勉強が進んでいる人は、1年程度でカバーできるでしょうし、あまり進んでいない人は2年程度はかかるでしょう。予備校のテキスト程度しか読んでいない人は、長い目で見て不安ですから、各科目について、基本書は1冊持っておいて、読み込んでみることを勧めます。すらすら読めれば、それだけ力がついてるということですし(したがって読むのにそれほど時間はかからない)、つっかえてしまうところが随所にあれば、それだけ穴がある(だからこそ読む意味がある)ということになります。
 その後は、上記の「3年目」へと進むことになります。情報源やその利用方法、ロースクールや予備校の利用方法、自主ゼミの勧め、事例問題検討の有用性は、上記のとおりです。
 最後に、意外と落とし穴になっているのが、「1日の絶対的な勉強時間が少なすぎる受験生が多い」ということです。長ければ良いというものではありませんが、自分の生活時間を見直し、集中して勉強できる場所はどこか、をよく考えて、勉強時間をできるだけ確保する態勢を確立することが重要だと思います。

(一応終わり)