警察署に灯油まく 放火未遂などの疑いで少年逮捕 広島

http://www.asahi.com/national/update/1212/OSK200512120050.html

持っていたプラスチック製のタンクから灯油約10リットルをまき、たばこで火をつけようとした。

灯油は同署1階のカウンターの外から机などに向けてまかれた。

灯油をまいて、火をつけようとした経験を持っている人は、ほとんどいない(そのようなことをする必要もない)と思いますが、私は、やってみたことがあります。放火事件を起こそうとしたわけではなく、放火未遂事件を、放火未遂事件として起訴すべきかどうか決めかねて、実験してみたのです。
私が担当した事件は、被疑者が、家屋の床に灯油をまき、ライターで点火しようとして点火できなかった、というものでした。灯油というのは、日常生活の中で使用され、家庭内で給油も行われるため、容易には着火しないように作られています。その当時に勤務していた地検の裏で、ベニヤ板に灯油をまいて、ライターで点火しようと何度も試みましたが、まったく点火できませんでした。その事件は、かなり理論面での検討も行いましたが、結局、放火未遂では起訴しませんでした(放火予備で起訴した記憶です)。
上記のニュースの事件では、「机など」となっていて、「など」が何なのかわかりませんが、机のような材質のものであれば、灯油をまき、それに点火しようとしても火はつかなかったものと推測されます。
採用する考え方によっては、こういった場合でも放火未遂罪成立の余地は十分あると思いますが、客観的に見て着火の可能性がない、実験しても火がつかない、となると、放火未遂では起訴しにくかったことを思い出します。

宇治小6刺殺 容疑者供述「女児いなくならなければ生きていけない」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051212-00000001-san-soci

宇治署の調べに対し、「紗也乃さんがいなくならなければ、生きていけないと思った」と供述

私も、かなりの数の犯罪者と接してきましたが、報道から感じる、この被疑者の特徴は、論理が著しく飛躍すること、飛躍の中で自らの攻撃性、暴力性を抑制できないことですね。
重大殺傷犯に、時々見られるタイプです。
塾講師の仕事を続けていたということですから、精神病ではないと思われますが、特異な性格の持ち主であったことは否定し難いと思います。そういった特質が、既に報道されている前科(過去に大学内で起こした窃盗・傷害事件)の原因にもなっていた可能性もあるでしょう。

「ゼミ担当の教授が会見 宇治、小6女児殺害事件で同志社大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051212-00000047-kyt-l26

によると、ゼミの担当教授は、

「(2003年の窃盗、傷害事件からの)更生の気持ちを彼から十分感じていたので、驚き、意外という気持ちだ」

「ひいき目かもしれないが、しっかり勉強していると信じていた」

などと語ったとのことですが、人を見る目がなかったと言われても仕方がないでしょう。

みずほ証券誤発注:「証券5社の手法 美しくない」金融相

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051213k0000e020055000c.html

マーケットの中での行動としては、何の非もなく、むしろ利益をあげたことで業界内では賞賛されるのかもしれませんが、死肉にむらがるハイエナのようで、後味は良くないですね。
私自身としては、こういった行動をとる会社や人に、信頼して何かを任せる気持ちにはなれません。ぼろ儲けで有頂天になっている関係者は、目先の利益獲得が、長い目で見てより大きな損失を招く場合もあることを、頭の片隅に置いておくべきでしょう。

放火事件における燃焼実験(前)

放火事件(未遂を含む)の捜査を行う上で、燃焼実験は避けて通ることができないでしょう。
放火事件の特徴は、証拠が燃えてしまい残らないことが非常に多いということです。目撃者がいれば強力な証拠になりますが、密かに行われることが非常に多いのも、この種事件の特徴です。
したがって、被疑者・被告人の「自白」に、立証を大きく依存する場合が多いということになります。
放火事件で、熾烈に争われたり、無罪になったりするものが少なくないのは、こういった放火事件特有の証拠構造によるところが大きいと言えます。捜査機関としても、この種事件では、自白の任意性・信用性確保に細心の注意を払うことが不可欠です。そこで必要となるのが、燃焼実験です。
被疑者・被告人が、放火の手段・方法について具体的に自白していても、実際にその手段・方法で放火行為が行えるかどうかはわかりません。そこで、燃焼実験により再現してみて、供述通りに放火が実行できるかどうかを確認するということが行われるわけです。
燃焼実験を行う場所は、警察学校の校庭とか、河川敷など、危険がない場所が選ばれます。大規模な燃焼実験を行う場合は、消防署に依頼して消防車を待機させることもあります。犯行時の状況をできる限り忠実に再現し、その内容は写真やビデオ撮影などで記録し、証拠化します。供述通りに再現してみたところ、放火が不可能、あるいは困難、ということになれば、供述の信用性は大きく揺らぎますから、そのまま放置することはできず、新たな捜査が必要、ということになります。
私が経験した燃焼実験で、印象に残っているものがありますので、別のエントリーでお話しすることにします。