「落日の工藤会」

 

工藤会事件を、地元の新聞社として強力に取材してきた西日本新聞社によるもので、私自身、報道で、都度、読んでいる程度で全体的なイメージが今ひとつつかめずにいたので、読んでみました。出版されたのもごく最近で、タイムリーに読めたように思います。

1990年に施行された暴力団対策法を契機に、警察当局と暴力団は対決する関係になり、それが熾烈さを増す中で出現したのが、工藤会のような、目的のためには手段を選ばない、目的のためには一般人を殺傷することも躊躇しない、マフィア型の組織であったと思います。本書では、そういった工藤会の勢力拡大、警察による取締りの歴史、一般市民を守りきれずに推移していた取締りが、検察、警察が協力した徹底した捜査により大きく進展した経緯がわかりやすく紹介され、理解が進みました。

暴力団組織の特殊性を踏まえた、状況証拠による推認を積み重ねた共謀の認定には、異論も強きところで、今後の暴力団捜査、公判の在り方も含め、議論は続くでしょう。続編を期待したいと思います。