乳腺外科医「わいせつ」事件に逆転有罪、「せん妄による幻覚」認めず…女性の証言「強い証明力」【追記あり】

乳腺外科医「わいせつ」事件に逆転有罪、「せん妄による幻覚」認めず…女性の証言「強い証明力」【追記あり】(弁護士ドットコム) - Yahoo!ニュース

●高裁の判断は

判決は、1審が「せん妄の影響を受けていた可能性があり、信用性に疑問が残る」としていた女性の証言について、「迫真性が高い上、知人に送ったLINEメッセージとも符合する。男性医師がベッドの左側にいたことなどは、他の証人の証言と整合しており、犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と認めた。 せん妄の可能性については、「事件当時せん妄に陥っていなかった、もしくは、仮にせん妄に陥っていたとしても、せん妄にともなう幻覚は生じていなかったと認められる」として、信用性の判断に影響しないとした。 また、1審が「信用性があるとしても証明力が十分であるとは言えない」としたアミラーゼ鑑定とDNA定量検査については、「科学的な厳密さの点で議論の余地があるとしても、女性の証言と整合するもの」として、信用性を補強する証明力が十分あるとした。

本件では、証拠関係の外形上、被害者は被害状況を証言し、被害者に身体に被告人の唾液の付着もありと、一見、犯行が立証されているように見えますが、個々の証拠を子細に見ていくと、1審が指摘したような様々な疑問が残ります。法律実務家は、よく事件の「筋」ということを口にしますが、人の出入りが多い病室で、医師が患者にこのような犯罪に及ぶ、という、そこに、筋的な座りの悪さを強く感じる人も少なくないでしょう。

私自身、個々の証拠を細かく見てはいないので、有罪、無罪と断定的に言うことはできませんが、1審が個別の証人の証言も直接聞き、慎重に検討して出した無罪判決を覆すにしては、決めつけが過ぎる印象を拭いがたいものがあります。

最高裁は、そもそもは事実誤認を審理するところではありませんが、いつもの三行半で終わらせるのではなく、上告後、慎重に事実関係を精査する必要があるでしょう。