強姦罪の被告に最高裁が逆転無罪 「犯罪の証明不十分」

http://www.asahi.com/national/update/0725/TKY201107250692.html

男性と犯行を結びつける証拠が被害者の供述しかない事件だったが、第二小法廷は「被害者の供述が信用できるかの判断は、特に慎重に行う必要がある」との考え方を示した。別の小法廷が09年4月に、電車内の痴漢事件について示した判断と同様の内容で、性犯罪の捜査や裁判に与える影響は大きいとみられる。
男性は06年12月27日午後7時過ぎ、千葉市内の歩道で女性に「ついてこないと殺すぞ」と声をかけ、近くのビルの階段踊り場で強姦したとして起訴された。男性側は「強姦ではなく、同意を得た性的行為だ」と無罪を主張していた。
第二小法廷は、女性が声をかけられた場所は人通りもあり、近くに交番があったのに、助けを求めなかった点などを不自然と指摘。「一、二審判決は経験則に照らして不合理で、犯罪の証明が不十分だ」と結論づけた。

こういった証拠構造の性犯罪(否認事件)は、結構あるものですが、起訴されてしまうと、被害者供述にさしたる裏付けがなく、不自然、不合理な点がいろいろととあっても、信用できるという方向で丸められてしまい、一審で有罪になれば、控訴、上告しても通らない、というのが通例ですね。最高裁のサイトにアップされた上記の事件の判決を一通り読んでみましたが、よく証拠を見ている、と感じるとともに、なぜ、同種の事件について、あまねく、等しく、こういった見方ができないのだろうか、ということも強く感じました。おそらく、事件を担当する最高裁調査官のセンス、熱心さ等により大きく左右されるもので、この事件はかなり運、巡り合わせがよかったのでしょう。
こうして、最高裁で光があてられるようなケースは極めて稀で、実際は、無罪になるべき事件、冤罪のケースが、かなり埋もれたままになっているのが実情と思われますし、そこに深刻なものを感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。

追記:

最高裁第二小法廷平成23年7月25日判決・判例時報2132号134頁