自衛隊明記の改憲、何が変わるの 9条2項が死文化?

https://digital.asahi.com/articles/ASKBK2CXLKBKOIPE002.html?ref=yahoo

自衛隊が認められる根拠は「自衛権」です。自衛権というのは日本国憲法には書かれていないけれど、主権国家であればどの国も持っている。でも、9条2項の規定上、「戦力」は持てない。そこで、自衛権を根拠にして、「自衛のための必要最小限度の実力」ならば憲法でも認められるはず、というのが政府の解釈なんです。「自衛隊は『戦力』ではない」と。
もし9条2項を削ってしまうと、もう今までと条件が全然違いますから、自衛隊は「普通の軍隊」になれます。
では、9条2項を残したまま自衛隊の存在を憲法に明記したら、どうなるか。私は2項は事実上死文化すると考えます。9条2項が残ることで「自衛隊は戦力ではない」とは言えても、自衛隊憲法上の機関として正式に認められることで、活動に対する制約はどうしても弱くなります。

憲法9条は、現行の規定自体で、日本が軍事大国になることに対する歯止めになっていると思います。しかし、それは、日本が、国家として持つ固有の自衛権を否定するものではありませんし、日本が侵略の危機に瀕した際に、それに対抗するだけの実力を予め準備しておき、それをもって抵抗、排除することまで否定するものではありません。
その意味で、そのための「実力」、現行では自衛隊ですが、そういう実力組織を保有することは、現行憲法上も合憲と考えるべきです。
私は、そのような解釈に基づいて、敢えて自衛隊の存在が合憲であることを憲法で明記しなければならないとまでは考えていませんが、注意的に記載しておくことも、国民の過半数がそれを望むのであれば、あって良いと考えています。ただ、あくまで憲法の枠内での実力組織であることを意識しておくべきで、規制の体裁としては、3項を新設して、

前2項の規定は、自衛権行使及び国民救援のため、武装した規律ある実力集団を保有することを妨げない。その集団は、平和を維持する目的の下、国際社会において確立された規範に基づき国際組織の管理下において、前2項に反しない範囲内で活動することができる。

とするのが良いのではないかと、私は考えています。「武装した規律ある実力集団」とすることで、禁じられる「戦力」と一線を画することができますし、「規律ある」としておくことで、規律のない民兵のような組織は禁じられることになります。「国民救援のため」も含めておくことで、災害対応のほか、海外の紛争地帯で取り残された邦人を救出するような自衛隊による活動にも正当な根拠があることになります。
「その集団は」以下は、現行憲法上、PKO、PKFの根拠が明文化されていませんから、そこを手当しておくという趣旨です。「国際社会において確立された規範に基づ」かない、「国際組織の管理下に」ない活動は、この規定の下では、いくら平和を維持する目的とされても許されません。
このように、適正なタガをはめておくことで、上記の記事で危惧されているような、「自衛隊憲法上の機関として正式に認められることで、活動に対する制約はどうしても弱く」なるという事態は避けられるでしょう。
なお、行使できる自衛権の範囲について、私は、集団的自衛権を無理な解釈で肯定しなくても、個別的自衛権の実質的な解釈により十分対応可能と考えており、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20171127#1511783377

結局、現行の9条を改正しなくても、あるいは上記のような3項を付加することで、適正妥当な状態になると考えています。