http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150902/k10010213451000.html
アメリカでは、ことし6月、連邦最高裁判所が同性婚を認める判断を示し、すべての州で同性婚ができるようになりました。ところが、南部ケンタッキー州のローワン郡で、結婚許可証を発行する書記官の女性が、信仰する宗教の信条を理由に、同性愛者のカップルに対して発行を拒み続けていて、全米の注目を集めています。
これに対して、複数の同性愛者のカップルが結婚許可証を発行するよう訴えを起こし、先月末、連邦最高裁は宗教の信条を理由に例外を認めるよう求めた女性の訴えを退けました。
これを受けて1日、同性愛者のカップルらが改めて許可証の発行を求めましたが、女性は再び拒否しました。女性は、「どういう権限で拒否するのか」と尋ねられると「神の権限で拒否する」と答えたうえ、弁護士を通して声明を出し、「神の定義に反する結婚の許可証に、私の名前が記されるのは私の道義心に反する」と主張しています。
日本でも、国家の斉唱や伴奏が思想・信条の自由の侵害であるとして憲法訴訟に発展したケースがありますが、それと共通の問題性を持っているのではないかと思います。上記の米国のケースでは、宗教も絡んでいるだけになかなか難しい面があります。
この問題については、日本の通説的な見解では、思想・信条の自由の、内面のみに関わる部分については絶対的に保障される一方で、それが外部的な行為に関わる場合は、思想・信条との関係性の度合いも考慮されつつ一定の制約は避けられないと見ていて(日本の最高裁の判例も基本的にそのような考え方に立脚していると言えるでしょう)、結婚許可証の発行については、発行者の思想・信条とは無関係に発行される公文書であり、一般的・類型的に見て、その発行により発行担当者の思想・信条が制約される度合いは僅少である一方で、公の制度として発行される必要性は大きい、といったことが、米国最高裁の上記の判断の背景にはあるのだろうと推測されます。
日本でも、こうした問題は今後も起きる可能性があって、その意味でも興味深いケースと感じました。