<鳥取刑務所>接見拒否「裁判所に部屋ない」弁護士、国提訴

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00000009-mai-soci

被告は普段、鳥取刑務所で勾留されており、支部での接見前、被告を護送する刑務所が「被告が逃走したり、(弁護士と)物を授受したりする恐れがある」として刑務官の立ち会いを要求。松本弁護士は裁判所の許可を得たと反論したが、刑務所側は「裁判所の指揮命令を受けない」と突っぱねた。居合わせた裁判官が「許可した」と告げても納得せず、刑務所側は被告を連れ帰った。松本弁護士はその日、控訴の意思を確認できなかった。
刑事訴訟法は被告と弁護士が第三者の立ち会いなしに接見できる「接見交通権」を規定。同法の規則は裁判所が接見場所を指定できると定めている。一方、刑事収容施設法の規則は、接見場所を「相手方との間を仕切る設備を有する」と定め、刑務所はこれを根拠に接見を拒んだとみられる。

記事にあるように、接見は、仕切り板等がある、接見設備がある場所で行うべきものとされていますが、最高裁判例で「面会接見」というものが認められていて、

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52294

判例によると、それは「秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の接見」「立会人の居る部屋でのごく短時間の接見」とされていて、その判例で問題となった事件では、

検察官が,立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」(面会接見)であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず,上記申出に対して何らの配慮もしなかったことは,違法である。

とされています。
ただ、判例も、接見設備がない場所で立会人なしで接見させることを認める、とまでは言っていなくて、刑事訴訟法39条2項では

前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。

とされ、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則70条2項では、

被収容者の面会の場所は、被収容者と面会の相手方との間を仕切る設備を有する室(以下「仕切り室」という。)とする。ただし、次に掲げる場合(受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)以外の被収容者の面会にあっては、第一号に掲げる場合に限る。)において、刑事施設の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがないときは、この限りでない。
一  被収容者が病室に収容されている場合その他の法務大臣が定める場合
二  親族と面会する場合その他の仕切り室以外の場所で面会することを適当とする事情がある場合

とされていますから、基本的には、上記の「仕切り室」での接見を要すると考えるべきでしょう。
上記の規則では、「刑事施設の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがない」場合で、「親族と面会する場合その他の仕切り室以外の場所で面会することを適当とする事情がある場合」が例外とされていて、私は、これを、記事にあるようなケースでの例外になり得るものかと、当初、思ったのですが、よく読んでみると、

受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)以外の被収容者の面会にあっては、第一号に掲げる場合に限る。

というのは、未決拘禁者は第一号の場合に限るという趣旨であり(「未決拘禁者としての地位を有するものを除く。」というのは、未決拘禁者としての地位を有する受刑者が除かれ未決拘禁者は第一号の場合に限ると読むべきでしょう)、規則上、例外はないということになります。
刑事訴訟法39条2項の「法令」に、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則70条2項も含まれますから、最高裁判例を踏まえつつ、形式上、法理論上で詰めていくと、立会人を置くことを求めた刑務所側の措置にも、それなりに理由、根拠はあったと見る余地はあると思います。
上記の最高裁判例は平成17年4月に出ていて、刑事収容施設法が成立したのは同年5月と、判例と法令が噛み合っていない面があるように思われ、そういう、一種のグレーな部分で問題となったのが記事にあるケースという気もします。
微妙さがあるのは、上記の最高裁判例では、

その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ,また,その部屋等を接見のために用いても,被疑者の逃亡,罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋

を、接見交通が保障されるべき部屋と考えているとも思われる面があることで、記事でのケースでは、裁判所の勾留質問室が接見場所として想定されていますから、用途や構造上、最高裁判例が上記のように言う部屋に該当する可能性はあって、それが、問題となっている刑務所側の措置の評価にどのような影響を及ぼすかということも、検討の余地があるでしょう。
今後の審理、判決を通じて、接見設備がない場所での弁護士接見について、依るべき合理的なルールが明確にされることが期待されます。