トヨタ役員麻薬輸入容疑で逮捕 落合洋司氏が判例解説

http://yukan-news.ameba.jp/20150619-115/

警視庁によると、麻薬成分である「オキシコドン」を含む錠剤57錠を密輸した疑いがあるとのこと。「オキシコドン」は鎮静作用があり医療用麻薬として利用されているが、厚労省によると個人が医療用麻薬を日本に持ち込むには、医師の診断書を示し、厚労省の許可を得る必要がある。

落合氏は薬の内容について理解して海外から郵送したモノが日本で違法となることを知らなくても、犯罪が成立したことになるとの判例を解説。違法という意識を持つ可能性すらないような薬物であれば「犯罪不成立」と見なされる余地があるとしながら、問題となっている錠剤については「調べればすぐわかることだから、無理だろう」との見解を示した。

ツイッターでもコメントしましたが、刑法は、38条3項で、

法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

としていて、故意犯成立にあたり「違法性の意識」が必要かについては、不用説が判例、とされています。ただ、「違法性の意識の可能性」すらない場合は不可罰、という裁判例や有力説もあって、犯罪の成否について現実的に争点になるとすれば、そういった可能性すら怪しいというケースでしょう。過去には、販促品か何かで模造したお札を配る前に警察に行って相談し特に問題があると指摘されなかったので配ったら立件、起訴された事件でその点が争われたものがありました(有罪になりましたが)。
上記の役員の件では、報道によると、「麻薬とは思わなかった」という供述であるとされていて、当該薬物自体については認識したうえで輸入したもののそれが違法であるとは知らなかった、ということであれば違法性の意識の問題になります。そうした薬物の輸入の在り方は、調べればおそらく容易にわかることと思われますから、違法性の意識の可能性すらなかった、とは考えにくいのではないかというのが私の印象です。事件自体については、捜査を尽くした上で、適正な処分が決せられるべきだと思います。濫用、他への譲渡といった背景がなく、個人としての使用目的であった、ということであれば、不起訴もあり得なくはないケースでしょう。