ニュース・コメンタリー (2014年03月08日)遠隔操作ウイルス事件裁判で問われているもの ゲスト:落合洋司氏(弁護士・元検事)

http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/003205.php

片山氏の犯人性を裏付ける決定的な証拠を持たないと見られる検察は、数々の状況証拠を提示することで、片山氏が犯人であることが間違いないとの印象を植え付ける戦略をとっていることはもはや間違いなさそうだ。しかし、仮に犯人が片山氏のパソコンを遠隔操作できる状態にあり、片山氏に代わってパソコンを自由に操作したり、パソコンの中身を閲覧できる状態にあったとすれば、氏の行動に合わせて様々な状況証拠を仕込むことも可能になる。

元検事で遠隔操作ウイルス事件にも詳しい弁護士の落合洋司氏に、今後の裁判のポイントをジャーナリストの神保哲生が聞いた。

ビデオニュースに呼ばれて出るのは久しぶりであったように思いますが、神保さんはこういった問題をよくフォローしていて、ポイント、核心を突いた質問をしてくれるので、話しやすく、私自身が今感じていることをかなり話すことができたというのが、出演を終えての印象でした。
この種のサイバー犯罪では、残されたログ(利用履歴)やデータから、犯人がダイレクトに特定されるのが普通ですが、本件は、そういった証拠構造にはなく、検察官が数々の状況証拠で犯人性を立証しようとしている、そこがかなり特異な事件と言えるでしょう。検察官が犯人性を指し示すとする証拠も、上記のような「遠隔操作」という可能性も併せて見ると、必ずしも犯人性を指し示していないということにもなってきます。さらに、こういった状況証拠による立証は、決定的なものが欠けるだけに、常に大なり小なり脆弱性を抱えているものですが。弁護人の主張では、アリバイ、江の島の猫の首輪の付着物から被告人とは別人のDNA型検出といった反証を今後予定しているとのことで、現状の「怪しい」「疑わしい」というレベルが犯人性の断定のレベルまで高まるのか、慎重に見なければならない事件だろうというのが私の率直な現在の感想です。
遠隔操作事件はまだ終わっていない、どこかに真犯人がいて息を潜めている可能性を排除できない、という慎重な視点が必要でしょう。そういったことを含めて、お話ししたつもりです。