【PC遠隔操作事件】「真犯人」からのラストメッセージ

http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130810-00027167/

ちなみに、このメッセージには「落合洋司先生」「神保哲生さん」「伊集院光」「片桐裕様」などの人物名がフルネームで出てくるが、なぜか「ラックの西本さん」だけは姓のみ。検察は、片山祐輔氏がメールやメッセージを書くために様々な言葉をネット検索していると主張している。検索すれば情報セキュリティー会社「ラック」の西本逸郎専務理事の名前はすぐに出てくるのだが…。

相当に用心深くふるまい、犯行後の証拠隠滅にも細心の注意を払っていたことがうかがえる。
一方の片山氏はどうか。警察の尾行にも気がつかずに、一連の犯行に利用した(と検察側が考える)スマートフォンを店で売り、たちまち回収された。逮捕前にマスメディアの記者たちにたくさんの写真を撮られていても、全く気がつかなかった。この鈍感ともいえる無防備さは、「ラストメッセージ」に書かれた警戒心の強さとは全く相容れない。

【PC遠隔操作事件】ラストメッセージ全文(上)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130810-00027168/
【PC遠隔操作事件】ラストメッセージ全文(下)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130810-00027169/

上記の「ラストメッセージ」では、

落合洋司先生がBBCの取材を受けていたようなので、それで私が言いたいこと、世界に向けて言うべきことは言ってくれたと思います。多分。

とあって、「真犯人」がずっと私のことを注視していたのだろうか、何がそこまで真犯人をして注目させるものがあったのだろうかと、このエントリーを書きながら考えていますが、答は出ません。
私は、今ではしがない弁護士ですが、かつては検察庁にいて捜査経験もあり、犯人が判明しない段階で、現れた証拠、資料から、犯人像をプロファイルする、ということは、自分なりにやったこともあり、そういうプロファイル結果と検挙された被疑者、被告人の人間像がずれている場合は、ずれに対して慎重でなければならない(疑問を持って臨む必要があり安易にこじつけるべきではない)と考えています。そういう観点で見ると、確かに、江川さんも指摘しているように、ラストメッセージから感じられる、用意周到で慎重、捜査が自分の周囲に及ぶことを十分に警戒し身構えている、といった「真犯人像」と、報じられているような、片山被告人の脇の甘さ、無頓着さには、ずれ、違和感を感じますね。
では、決定的に矛盾しているか、というと、それはどうかな、とも思います。かつて観た刑事コロンボのある作品で、完全犯罪を狙ったのに、という犯人に対し、コロンボが、完全犯罪というものはない、犯人は必ずミスをする、それを見つけるのが自分の仕事なんだと喝破するシーンがありました。私は、江の島の猫に記憶媒体を取り付ける、という挙に真犯人が出た当時から、真犯人は自己顕示欲が高じてミスをした、と言ってきましたが、片山被告人が仮に真犯人であれば、その挙に出なければ検挙されなかった可能性がおそらくかなり高く、用意周到で慎重、強い警戒心を持ちつつも、一連のメールやラストメッセージにも現れているような「自己顕示欲」が命取りになった可能性はあるように感じています。刑事コロンボなら、そこが犯人のミスでしたね、と言うところでしょうか。
とは言え、こうしたプロファイリングは、参考にはなっても決め手になるものではなく、決め手になる決定的な証拠は、検察官が提示すべきものです。それが未だに提示されていない段階で、被告人が真犯人であるとは到底言えず、我々は真犯人以上の慎重さをもってこの事件を見なければならないでしょう。
最終的に再審無罪となった財田川事件で、ある再審棄却決定を出した裁判官は、事実認定の難しさに思い悩んだ心情を、財田川よ、心あれば真実を教えてほしい、と決定書の中で吐露しました。遠隔操作事件について言うならば、江の島の猫よ、しゃべることができれば真実を教えてほしい、というところでしょうか。この事件はまだ終わっていない、ということを改めて強く感じます。