http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111226-OYT1T01426.htm?from=y24h
吉田所長は、本店などと相談したが、注水中断は危険と考え、自らの責任で注入を継続した。その際、発電所対策本部の注水担当者を呼び、本店などとつながっているテレビ会議のマイクに拾われないよう、小声で「これから海水注入中断を指示するが、絶対に注水をやめるな」と指示。そのうえで、部屋全体に響き渡る声で海水注入中断を宣言した。このため、本店だけでなく、現場作業員の大半も注水は中断されたと思い込んでいた。
組織で動いている際に、指揮・命令に従わなければならないのは当然のことですが、指揮・命令は、何らかの目的を達成するためのものですから、目的達成のため指揮・命令に従うべきではない場合、「独断専行」が認められる必要があります。
戦史等でも、独断専行により勝利をおさめた例は多くありますが、例えば、日本海海戦でも(先日のドラマ「坂の上の雲」では省略されていましたが)、連合艦隊による敵前大回頭、砲撃開始の後、バルチック艦隊中の1隻が、舵の故障のため北上しはじめたのを東郷長官が艦隊全体の進路変更と誤認しそれを追うよう指示して第1戦隊が進路を変えたのを、後続する第2戦隊は誤認と見抜いて進路を変えず、そのまま進行しながら砲撃を続け、それが歴史的な大勝利につながったことが明らかになっています。第2戦隊が東郷長官の指示に機械的に従っていれば、勝機を失い、あそこまでの大勝利はなかった可能性が高く、取り逃がされた艦隊中の多くがウラジオストクに逃げ込み、日本が制海権を確立することができず、日露戦争はあのような形で終結できなかったかもしれません。
こういった独断専行の必要は、どうしても生じる場合があるため、旧陸軍の作戦要務令でも是認されていたことも有名です。
事件は現場で起きている、というのは、有名な映画の一節ですが、指揮・命令に従わなければならない中、大きな目的を達成するため敢えて指揮・命令に従わず独断専行すべき場合もある、という、著名な事例に、記事にある注水のケースは加えられることになった、ということでしょう。学ぶべき、貴重な実例であると思います。