http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130209/plc13020908210006-n1.htm
レーダー照射では、党指導部の指示か、軍の現場の独断だったかが焦点。防衛省幹部は「指導部の指示であれば照射を即座に正当化した上で、反発のメッセージとして別の形で挑発に出る準備をしていたはずだ」と分析する。
逆に、挑発が沈静化したことで、国際社会の批判を恐れた指導部が慌てて挑発の自粛を軍に命じたとの指摘が多い。パネッタ米国防長官も中国に自制を求めており、政府の積極的な公表が中国軍の挑発を封じる上で奏功したといえる。
我々は、日本国憲法の下、シビリアンコントロールが徹底した自衛隊の存在を、軍隊というものはそういうものという感覚で見がちですが、戦前、戦中の旧軍、特に陸軍は、関東軍などが、昭和天皇や参謀本部の統制にも服さず、独断で兵力を動かすようなことを平然と繰り返していて、世界の歴史上も、こうした「軍の暴走」は枚挙に暇がないほど存在します。軍というものは、強大な武力を持つことで一人歩きしがちなもので、だからこそシビリアンコントロールが必要であるわけですが、中国人民解放軍のような巨大な軍隊であれば、共産党のために存在するのが建前であっても、末端の部隊指揮官が日本を強く敵視し、小規模な武力衝突を想定しつつ独断で挑発行為を繰り返す、といったことが行われる可能性は、無視できない程度には存在するでしょう。それは、かつての関東軍がやっていたことでもあり、十分にあり得ることであって、日本は、そうした危険な状態に直面している、ということを認識して慎重に対応しなければならないと思います。
軍事行動を展開する上では、想定外の事態が出現することがあります。そうした事態に対し、旧陸軍の作戦要務令でも「独断専行」が認められていましたし、それを否定すれば座して敗北を待つことになりかねず、軍隊というものは、常に、独断専行する可能性を持っている、そういう存在です。そして、これは往々にして拡大解釈されがちなものでもあって、それだけに危険です。
中国人民解放軍の末端部隊は、我々のように豊富な情報に接しているわけでは、おそらくなく、狭い視野でしか物事を見ていない可能性が高いでしょう。そういう、狭い範囲でしか物事が見えない人々にも、自分たちがやっていることの重大性、危険性がありありとわかるようにする必要があります。ここは、米国の協力を得る必要があるところで、米軍戦闘機が尖閣周辺を継続的に哨戒飛行するとか、いろいろな方法があるでしょう。現在、横須賀を母港としている米空母ジョージ・ワシントンを、暫定的に佐世保に寄港させ、それについて世界に向け大々的に情報発信し、尖閣周辺海面で継続的に哨戒行動する、というのも、今後、緊張がますます高まる恐れがあれば真剣に検討すべきでしょう。
これについては、以前、
太平洋戦争 最後の証言 第三部 大和沈没編
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120513#1336873673
でコメントしたように、当時の三上連合艦隊作戦参謀が、
作戦行動が可能な状態にしていた虎の子の第二艦隊を、瀬戸内海から佐世保に進出させ、三上氏の言葉によれば「位を利かす作戦」、すなわち、第二艦隊が夕刻に佐世保を出港すれば翌朝には沖縄に到着するという状態を脅威と感じた敵機動部隊をおびき寄せ、国内の航空戦力も結集して打撃を与える、という作戦を考えていた
ことが思い出されます。もちろん、現在において、中国海軍を挑発したりおびき出すことをやるわけではありませんが、佐世保から緊急に出港すれば一気に尖閣周辺海面に到達できることによる、与える印象、軍事的プレゼンスには多大なものがあるでしょう。そして、これは、中国に対する強烈なメッセージにもなります。
危機を煽るのではなく、鎮静化させ、不測の武力衝突が起きないようにするためにはどうすべきか、ということを、今後の議論の中心に据えるべきでしょう。