三陸海岸大津波

三陸海岸大津波 (文春文庫)

三陸海岸大津波 (文春文庫)

昨夜、一気に読みましたが、この種の作品を書くことを得意とした吉村昭の面目躍如、という印象を強く受けました。
紹介されているのは、明治29年昭和8年昭和35年に、三陸地方を襲った津波の実態や被害ですが、特に明治29年昭和8年の被害が凄まじいもので、読んでいて、1か月余り前に起きた大災害が、この地方で繰り返されてきたことを強烈に認識しました。津波の大きさも、明治29年昭和8年のいずれにおいても、とても数メートル程度ではおさまらず、明治29年の際には50メートル程度に達した地域もあったのではないかという説も、この本の中では紹介されています。
昭和8年津波で、子供の頃に被害に遭い家族の中で1人だけ生き残った田老町の女性のことが紹介され、田老町が壊滅的な被害を受けたということから、ネットでその女性の名前を検索してみると、避難者の中に同姓同名で同世代の方がいて、それがその人であるとすれば、一生のうちにこのような大災害に2度も遭って、今、どのような気持ちでいるのだろうかという気がしました。
読み終えて特に感じたのは、このような災害は、数百年に1度とか1000年に1度といった稀有なものではなく、数十年に1度程度の頻度で、繰り返し襲ってきていて、今こそ、万全な災害対策を講じる必要があり、そのためには過去の災害の実態に謙虚に学ばなければならないということでした。
今、読んでおくべき1冊でしょう。