http://www.j-cast.com/2011/04/13093027.html?p=all
ポストの記事では、関連法案を「コンピュータ監視法案」と呼び、捜査当局が令状なくプロバイダに特定利用者の通信記録保全を要請できるものだとしている。そして、「やろうと思えば誰の通信記録でも安易に取得されてしまう」との専門家の話を付けた。さらに、警察庁は歩調を合わせるように、名誉毀損罪などにつながるデマ規制強化に乗り出したとしている。
ネット上では、孫社長らの抗議行動に共感する声もある。ツイッターでは、「メールの内容までとはプライバシーもない」「なんだか言論の自由が無くなっていくな」といったつぶやきが出た。
しかし、上杉さんが引用したポストの記事には、事実誤認もあるのではとの指摘も出ている。
元の週刊ポストの記事自体を読んでいないので、その当否についてコメントするのは差し控えますが、問題となっている法律案の内容は、法務省のサイト内の
情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案要綱
http://www.moj.go.jp/content/000072558.htm
の第二の「五 保全要請等」にあるように、
1 検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者等に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができるものとし、この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至ったときは、当該求めを取り消さなければならないものとすること。(第百九十七条第三項関係)
2 1により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができるものとし、ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができないものとすること。(第百九十七条第四項関係)
3 1の求め又は第百九十七条第二項の捜査関係事項照会を行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらの要請に関する事項を漏らさないよう求めることができるものとすること。(第百九十七条第五項関係)
というものです。できるのは、差押え等(これは裁判所が発する令状によります)の前に、プロバイダ等に対して、「通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定」(あくまで「履歴」であり、例えばメールそのものは対象にならない)して、最大限60日の範囲内で保全するよう要請することで、要請事項を漏らさないように求めることもできるものとされています。要請に応じる義務はなく、要請に応じなくても制裁はありません。現在でも、捜査機関がプロバイダ等に対して、差押えの前にこういったログ(通信履歴)が消去されないよう、保全を要請することは、事実上、行われていて(要請されれば協力する場合が多いでしょう、協力しないからと言って制裁はもちろんありません))、そういった措置を明文化したもので、新たにコンピュータを監視するようになった、というものではないというのが常識的な見方でしょう。
元々、今回の改正案は、数年前に、一旦、国会で審議されようとしたものが、共謀罪と一体となっていたため、共謀罪反対のうねりの中、お蔵入りしていたものが、共謀罪とは切り離して審議されるようになったもので、大震災のドサクサに紛れて、というのは当たらないと思います(そういう疑いを招く法務省の不徳の致すところ、ということは感じますが)。
法案の内容について、冷静に検討し、是々非々で臨むことが必要でしょう。