ネット選挙:課題、なりすましや中傷 削除へ期間短縮の特例

http://mainichi.jp/select/news/20130216ddm012010004000c.html

ニフティなど通信事業者またはSNS提供会社に削除を依頼する。現在も、名誉毀損(きそん)などに当たる書き込みは削除できる。プロバイダー責任制限法で、問題の情報発信者に連絡し、7日間回答を待てば削除しても責任を問われないのだ。今回は、この期間が長いと選挙期間が終わってしまうため、改正案では現行の7日から2日に短縮する「特例」を設けるとしている。ツイッターフェイスブックなど海外の会社にも同様の対応を求めるとみられる。
一方で、明確ななりすましや中傷ではなくても、政党や候補者から依頼があれば、2日で削除される懸念もある。

「特例」は、通信事業者らにとっても厳しい内容だ。削除申請があった場合、該当する選挙や候補者が実在するかどうか確認に時間がかかる。これに手間取ると「2日」に短縮する意味はなくなるため、事業者らからは「全国の選挙日程と候補者、公式サイトや公式アドレスなどをどこかで集約してほしい」という声もある。

プロバイダ責任制限法による手続では、申告が本人によるものかどうかを確認する必要がある上(そういった確認や、プロバイダ責任制限法が定める要件に沿った申告をすること自体に、一定の時間がかからざるを得ないでしょう)、削除するかどうかについて発信者に意見聴取して反論が出てくればそれを検討する必要もありますから、記事にあるような期間短縮を行っても、そういうやり取りをやっている間に選挙が終わってしまう、終わらないまでも、問題のある表現は一定期間掲載されてダメージを生じさせてしまう、という可能性が高いでしょうね。しかも、インターネット上の表現は、削除されても新たに書き込むことが容易ですから、際限のないイタチごっこになる可能性も高いでしょう。プロバイダ責任制限法に依存する発想は、早めに捨てたほうが良いと思います。
むしろ、実効性、という意味では、公選法違反の可能性があるインターネット上の書き込み等について、候補者等からの申告があれば、警察が、刑事訴訟法197条の保全要請、すなわち、

3項  検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、30日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができる。この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。
4項 前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、30日を超えない範囲内で延長することができる。ただし、消去しないよう求める期間は、通じて60日を超えることができない。

といった規定を活用しつつ、適宜、適切に立件、捜査して、そういった動きがあることによる抑制効果を狙うことも行われるべきだと思います。ここでも、警察のサイバー犯罪捜査を遂行する力が求められることになります。
とは言え、ネットを使った選挙運動が自由に行えるようになれば、ネット上で壮絶な叩き合いになることは目に見えていて、叩かれてもそれにめげず、自らを、ネットの上で徹底的にアピールしてその真価を認めてもらえるような、ネットをうまく使いこなせる候補者になることが求められることになるでしょう。その意味では、今までにはなかった、新たな戦いが始まることになります。