犯罪捜査に当たった警察官作成の書面が証拠開示の対象になり得るとされた事例(最決平成20年6月25日・判例時報2014号155ページ)

検察官は、私費で購入した単なる個人的メモである、として、裁判所による提示命令にすら従わなかったものでしたが、最高裁は、

1 犯罪捜査に当たった警察官が犯罪捜査規範13条に基づいて作成した備忘録であって、捜査の経過その他参考となるべき事項が記載され、捜査機関において保管されている書面は、当該事件の公判審理において、当該捜査状況に関する証拠調べが行われる場合、証拠開示の対象となり得るものと解するのが相当である
2 警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は、裁判所が行うべきものであるから、裁判所は、その判断をするために必要があると認めるときは、検察官に対し、同メモの提示を命ずることができるというべきである

という判断を示しています。
前提となっているのは、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20071227#1198714917

でもコメントした最決平成19年12月25日ですが、検察官が、同決定の射程距離を狭め限定しようと、提示命令にも従わず必死に抵抗したことに対する、上記決定であり、その意義は大きいと言えるでしょう。
今後の焦点は、検察官作成のメモについても、最高裁が同様の判断を示すかどうか、ということではないかと思われます。更に言えば、「紙」のメモに限らず、捜査官が記録していたもので電子媒体等の形で持っているものについても対象になるか、といったことも、今後、問題になりそうな気がします。物事の本質に照らせば、「紙」に限定する理由は、特にないでしょう。

追記:(平成21年12月2日)

判例批評(渡辺修)判例時報2054号・判例評論610号196ページ