白バイ隊員から大麻買う、警視庁巡査部長も書類送検

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050222-00000314-yom-soci

警視庁の白バイ隊員がコカインなどを隠し持っていた事件で、同庁公安1課の巡査部長がこの隊員から大麻を買い取っていたことが分かり、同庁は22日、巡査部長を麻薬特例法違反(規制薬物の譲り受け)の疑いで書類送検した。

これは、おそらく、麻薬特例法(「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」、しかし、本当に長たらしいですね)の、

(規制薬物としての物品の輸入等)
第8条
1 薬物犯罪(規制薬物の輸入又は輸出に係るものに限る。)を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、若しくは譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

の、2項該当ということだろうと思います。
薬物犯罪の場合、関わったものが薬物であることは、通常、鑑定書によって立証されます。覚せい剤譲り受けの事件であれば、譲り受けた覚せい剤を使用し尿中から覚せい剤が検出されたという鑑定書とか、譲り受けた覚せい剤の一部が残っていてその鑑定書、といったものです。
ただ、そういった鑑定書による裏付けができない、いわゆる「物なし事件」というものもあります。古い判例では、必ずしも鑑定書による裏付けが必要ではない、としたものもありましたが、実務では、鑑定書による薬物性の立証ができないものは立件や起訴の対象にはしていませんでした。
そこでできたのが、上記の麻薬特例法中の条文で、「規制薬物としての」譲り受け等があれば、物なし事件でも処罰ができることになりました。立法当時の法務省の説明では(私の記憶しているところによると)、この条文は、クリーン・コントロールド・デリバリー(禁制品を抜き取り、又は無害な物質と差替えて行うもの)が行われた場合の適正な処罰を確保するためのものであるが、従来からあった「物なし事件」の処罰も可能になる、というものだったと思います。
ただ、私が知る限り、この条文は積極的に活用まではされていないはずです。上記のニュースの書類送検された警察官は、警視庁の内部調査等により、大麻譲り受けが発覚したと思われますが、こういった運用実態があるので、敢えて立件してけじめはつけるものの、身柄拘束まではせず書類送検とした、ということではないかと推測しました。