刑事訴訟法の教科書

ロースクール生のブログ

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で、池田・前田「刑事訴訟法講義」(以下、「池田・前田」と略称)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4130323288/hibikoreko08b-22/249-5079352-7624323

しかし勉強を初めて刑訴についてだんだんわかってくると、その本が自分の体質に合わないことがわかってくる。こういう理屈でこうなるが現実はこうだ、というスタンスではなく、現実はこうだけどそれを説明するためにはこう解釈するべき、というスタンスで書かれていて、結果は当然「現実の無批判的受け容れ」となる。そうか、「実務に合致」の正体はこれだったのか、と理解した。これでは、現実に拷問が行われたとしたら、必要性・許容性ありと理屈付けして合法ということになってしまうのではないかと思ってしまう。

といった理由で、「体質に合わない」とされていた。
確かに、司法試験受験のための基本書を選択する上で、読んで納得できるかどうか(体質に合うかどうか)は重要である。異性関係と似ている面があって、好きだ、と思えば細かい点も気にならないし、読んでいても(一緒にいても)苦にならないが、嫌だ、と思うと、ちょっとした言葉遣いとか細かい点が気になるし読みたくもなく(一緒にいたくなく)なってくる。やはり、それなりに納得しながら読めるような、自分に合った基本書のほうが望ましいと思う。
ただ、池田・前田は、現行の刑事訴訟実務について、できるだけバランス良く全体像を描き出し、理論的な根拠も説明する、というスタンスで書かれており、今まで類書がほとんどなかっただけに、これはこれで貴重であり参考になると私は考えている。今、司法試験受験のための刑事訴訟法の基本書で何を一冊推薦しますか、と聞かれれば、この本を推薦する。やはり、実務家を目指す以上、現行の実務で何が行われ何を根拠にしているか、を知ることは重要であると思うからである。
ただ、この本で、現行の実務に対する批判的検討が不十分であるというのは事実である(よく読むと、結構、謙虚に現状認識をしている点もあったりするが)。そういった点は、講義とか、他の本の併読などで補ったほうが、より興味を持って勉強できると思う。
そういった意味で、私が推薦したいのは、やはり、田宮先生の

刑事訴訟法

である。池田・前田には、残念ながら、刑事訴訟がこうあるべき、といった信念、哲学がないが、田宮・刑事訴訟法には、そういった信念、哲学がある。また、田宮先生は、実務と遊離した刑事訴訟法にならないように、いろいろと考えられた上で理論を展開されており(結果的に中途半端になって、実務と理論の双方から不満を持たれているところもあるが)、そういった面でも参考になる。
田宮先生が早くにお亡くなりになったことが、私は残念でならない。裁判員制度など、変わろうとしている刑事手続について、いろいろと発言していただきたかったと思うが、それは残された我々(私などは単なる端くれに過ぎないが)の責務なのだろうと思う。