特別背任容疑の役員を釈放 栃木・産廃会社資金流出


http://www.asahi.com/national/update/1206/036.html

同地検の内尾武博次席検事は「暴力団側に多額の資金が流出したのは事実と認められるが、関係者の多くが死亡または失踪(しっそう)し、(産廃処理会社の)実質的な経営主体がだれなのかという点がはっきりしないため」と説明した。組長ら暴力団側が経営を支配していた可能性を否定できない場合、資金流出による背任性を公判で立証することが困難になるとの判断から、最終的に不起訴処分を下すとみられる。

内尾次席検事が東京地検特捜部在籍中に、同検事が主任の事件の応援をしたことがありますが、この方は、どちらかというと証拠評価が「強気」のほうですから、そういった方がこのように言われている以上、起訴は無理なのだろうと思います。
以前、このブログで、この事件について、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041115#1100475521

捜査の狙いとしては良いと思いますが、背任の構成要件上の問題としては、提供された資金の趣旨、そういった資金提供が「任務違背行為」であり会社に損害を及ぼす行為であったと評価し切れるかどうかでしょう。
暴力団と密着し一体化して営業する企業の場合、資金提供による様々なメリットが考えられ、資金提供が「反社会的」であっても「背任」と評価しきれない可能性があるかもしれない、と思います。
起訴され有罪になるかどうかが注目されます。

と述べましたが、どうも、私の危惧が的中していたようです。
静岡地検に勤務中に、学園理事長による巨額背任事件を1件、破綻金融機関での背任事件1件を起訴し(どちらも有罪で確定)、その際、背任罪についてはかなり勉強し、その難しさは十分理解しているつもりです。背任罪を安易に立件、起訴しようとするのは禁物で、事件性とか、事実の中のどこで捉えて立件するかについては、慎重な検討が必要です。