太平洋戦争 最後の証言 第三部 大和沈没編

太平洋戦争 最後の証言 第三部 大和沈没編

太平洋戦争 最後の証言 第三部 大和沈没編


昨年出た

太平洋戦争 最後の証言 第一部 零戦・特攻編

太平洋戦争 最後の証言 第一部 零戦・特攻編

を読んで、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110821#1313936547

その後に出た

太平洋戦争 最後の証言〈第2部〉陸軍玉砕編

太平洋戦争 最後の証言〈第2部〉陸軍玉砕編

も、ぽつぽつと読んでいましたが、第三部の「大和沈没編」が出たため、第二部よりも先に、第三部のほうを読みました。
戦艦大和に関する、関係者の体験談は、今までに、いろいろと読んだことがありましたが、本書では、建造当時からその最期までを、時系列に沿って、その時々の体験談が紹介されていて、大和に関するこの種の本としては、決定版と言っても過言ではない上、戦後、既に今年で67年目で、当時の関係者も存命者は数少ない状況ですから、正に「最後の証言」になるということを強く感じました。
戦闘の苛烈さや悲惨さ、その中で生き残った人々の生々しい体験談も強烈でしたが、私自身の印象に特に残ったのは、三上作夫・連合艦隊作戦参謀の述懐で、南方からの資源入手が困難になり燃料が枯渇する中、作戦行動が可能な状態にしていた虎の子の第二艦隊を、瀬戸内海から佐世保に進出させ、三上氏の言葉によれば「位を利かす作戦」、すなわち、第二艦隊が夕刻に佐世保を出港すれば翌朝には沖縄に到着するという状態を脅威と感じた敵機動部隊をおびき寄せ、国内の航空戦力も結集して打撃を与える、という作戦を考えていたところ、連合艦隊内で反対が強い中で、昭和天皇から「海軍にもう艦はないのか」という御下問があったことから沖縄特攻作戦が立案、実行されるに至った経緯や、作戦としては第二艦隊を孤立状態で沖縄に向かわせるというものではなく、沖縄の陸軍第32軍や国内の航空戦力が一気に攻勢に出て敵に打撃を与える目論見であったものが、第32軍が呼応することなく終わり作戦も失敗に終わったことなどが、生々しく語られていて、大和沖縄特攻作戦が持っていた意味や目的、といったことが、よくわかりました。
三上氏は、

もちろん成功の算が少なかったのは事実です。それは誰が考えても同じだが、敗け戦の中では、あくまで主導権はフリーハンドで敵に握られているわけです。しかし天象海象の状況で、あるいは敵の配備ミスなどで、全然見込みがないとは言えない。それが戦というものです。私は聯合艦隊司令部がやろうとしたことは、それなりの価値があったと思う。三十二軍の総反撃に大和が加わり、航空隊も全力をあげてこれにあたる。あらゆる力を結集して勝利の一点に集中する。そういう行動ならば賛成だ、すなわち“大和出撃やむなし”と、私は思ったわけです。それだけに三十二軍が出なかったところが理解に苦しむところなんです。
(25ページ)

と述懐していて、あくまで海軍の作戦担当者側からの見方ではありますが、劣勢にある状況下でどうすべきか、坐して敗北を待つのか、局面を打開するため「あらゆる力を結集して勝利の一点に集中」して思い切って打って出るのか、といった場面に遭遇する場合(戦闘だけでなく、長い人生の中ではそういうこともあるものですが)にどうすべきかを考える上で参考になるものがありました。
かなり読みごたえのある、充実した内容で、興味ある方は、是非、読んでみてください。

2012年05月12日のツイート

夜明けの街で

夜明けの街で (角川文庫)

夜明けの街で (角川文庫)

昨年秋に、映画化されて公開されていましたが、その当時に、興味を感じて少し読んでいたものの残りを読みました。映画は、結局、観ずに終わりましたが、原作はなかなかおもしろく読めました。
不倫相手の女性に、殺人事件の疑いがかかっていて・・・というストーリーでその疑いが果たして、というところや、主人公と不倫相手の様々な駆け引き、心理描写も、丹念に書き込まれていて、興味深いものがありました。読みながら思い出したのは、かなり前のことになりますが、仕事の関係で私の身近にいた人が、殺人事件の被害者と最後に接触していた、ということで、警察の捜査対象になっている、ということがわかったことがあって(詳しく言うと特定されるので言いませんが)、そのことを知った後、その人を見ると、もしかしたらこの人が真犯人?という疑惑が頭をもたげて、穏やかならざる気持ちになったことが思い出されました。その後、その人が逮捕された、という話を聞きませんが、今でも、真相は果たしてどうであったのか、ということは感じます。最近、黒だ灰色だと、無罪判決を巡って外野がうるさく騒いでいる事件がありましたが、事件、特に刑事事件というものは、黒かと思えば白であったり、白になりきれずに灰色のままであったりと、様々な色を呈しながら推移するもので、起訴されなかったもの、起訴されても有罪にならなかったものを、安易に、あれは本当は黒かった、などと語ることはできない、ということを感じます。この作品を最後まで読んだ人にも、これと似た感想を持つ人がいるかもしれません。

裁判員時代に死刑を考える

裁判員時代に死刑を考える (岩波ブックレット)

裁判員時代に死刑を考える (岩波ブックレット)

先週金曜日夜に、TBSラジオのDigに呼ばれて、陸山会事件について1時間ほど、他の人と共に話したのですが、

http://www.tbsradio.jp/dig/2012/05/post-1857.html

その際、出演していた共同通信の竹田昌弘氏から、この本をいただきました。ありがとうございました。
裁判員制度、死刑ともに、様々な難しい問題を含んでいますが、ざっと目を通したところ、上滑りな議論ではなく、具体的な実例を踏まえつつ、地に足のついた堅実な議論が進められていて、対談形式なので読みやすい上、分量も適当で、この問題に関心を持つ幅広い人々や、法学部等の学生、高校生といった人々が勉強のため読むのに適しているのではないかと思いました。