図書館Webサイトへのクローラを実行して逮捕された男性、不起訴に

http://slashdot.jp/security/10/06/21/118216.shtml

男性は問題となった岡崎市立中央図書館のヘビーユーザーであり、図書館の新着図書ページが使いにくかったために図書館のWebサイトをスクレイピングして自分用に使いやすいデータベースを作成することが目的だったとのこと。また、サーバー側の負荷も考えてクロールする頻度等を決めたとのこと。

上記のような経緯であれば、少なくとも刑事事件として立件するようなものじゃないですけどね。
この種の事件では、「被害者」側から警察への相談、被害届提出や告訴があって、はじめて警察が動くもので、立件過程に、より慎重さが必要ではなかったかという印象を受けます。田舎では、公的機関が被害が出た、迷惑したと騒ぐと、一般の人なら放置する警察が迅速に動く傾向があり、本件でも、立件されるに至った背景事情の検証が必要という気がします。
起訴猶予処分というのは、建前上は、犯罪事実が認定できた上で諸般の事情により起訴はしない、というものですが、本来は嫌疑不十分であっても、捜査機関(警察によっては嫌疑不十分ではメンツがつぶれるから起訴猶予にしてくれと検察庁に泣きつくところもあります)の都合で起訴猶予になっている場合があって、起訴猶予だから犯罪事実は認定されたんだな、と見ると間違うことがあります。

2010年06月21日のツイート

車暴走させ11人死傷=「首でむしゃくしゃ」、元期間工を逮捕−マツダ工場内・広島

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201006/2010062200239&rel=y&g=soc

容疑者は工場の東正門から侵入し、同工場内の7カ所でマツダ関係者を次々にはねた上、北門から逃走。

事件が起きた宇品工場の近くに、私が通っていた修道高校・中学があって、朝、自転車通学で学校へ向かっていると、宇品工場へバイクに乗ったマツダ関係者が続々と向かっていたことが思い出されます。不意を突かれ、何が起きているかわからないままはねられた人も多かったでしょう。
むしゃくしゃするから、不満があるから、といった理由で、人を平然と殺傷する、その心理状態については、単に心の闇、といったことで済ませず、科学的な解明が必要という気がします。

<裁判員裁判>千葉地裁で初の無罪判決…覚せい剤密輸事件

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100622-00000029-mai-soci

被告がボストンバッグ内のチョコレート缶に覚せい剤が入っていることを認識していたかが争点となった。弁護側は、土産として他人に渡すよう頼まれて缶を預かったなどとして「中身は知らなかった」と起訴内容を否認。検察側は「覚せい剤密輸で公判中の者からの依頼で、報酬約束で缶を持ち帰った」などと主張していた。

私が検察庁で最後に勤務したのは千葉地検で、5か月だけではありましたが、麻薬係検事としてこの種の薬物密輸事犯は十数件程度、捜査した記憶があります。中身は知らなかった、という供述になるのがほとんどで、認識を裏付ける直接的な証拠はないのが普通なので、状況証拠を積み重ね立証する、ということを丹念にやる必要があり、そのための捜査にもかなり手間がかかったことが思い出されます。
検察庁としては、この種の薬物密輸案件で無罪が次々と出るようでは薬物の水際防止が困難になると考える可能性が高く、控訴して逆転有罪を狙うのか、裁判員様のありがたいご判断ということでこのまま受け入れ確定させるのか、かなり悩ましいものはあるでしょう。

基本判例に学ぶ刑法総論

基本判例に学ぶ刑法総論

基本判例に学ぶ刑法総論

今日の午前中、霞が関弁護士会館地下にある書店に立ち寄ったところ、この本があったので、午後の民事事件まで、弁護士会館内の図書館で拾い読みしていました。
山口説を前面に出すことは避けつつ、判例がどういった考え方に立って形成されているのかが分析されていて、司法試験受験レベルだけでなく、実務家にとっても役立つ本という印象を受けました。個々の判例に関する解説は簡潔ですが、ポイントを突いていて、これを1冊持っておけばかなり役立つものになることは間違いないでしょう。