ライブドア側に2億円 バリュー社新株、高値売却

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200601180008.html

特捜部は十七日午前六時十分すぎまで、十二時間近くにわたってライブドア本社を家宅捜索。同日、新たにライブドアの監査を担当する港陽監査法人横浜市)なども捜索した。

単なる(と言っては失礼かもしれませんが)「風説の流布」で終わらせるつもりなら、監査法人のガサまではしないのではないか、と思います。
特捜部が、事件を大きく捉え、徹底的に解明するという並々ならぬ決意で動いているような気がします。

ライブドア本体も粉飾決算、数社利益を付け替え黒字に

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060118-00000001-yom-soci

特捜部は17日、関連会社の証券取引法違反容疑で、ライブドアの会計監査を担当していた港陽監査法人横浜市)も捜索、本体の粉飾の実態も調べている。

特捜部が、全体としての容疑をどのように見ているかはよくわかりませんが、当初、報道された「風説の流布」を「入口事件」として、上記の容疑も含め、いくつかの事実を追っている、という状況かもしれません。
捜索・差押をするにしても、また、その後、間をおかずに関係者を取り調べたり身柄を取ったりするにしても、当面における確実な容疑事実というものが必要です。そういった事件を、「入口事件」ということがあります。例えば、本命が贈収賄事件の場合に、その過程で行われたことが判明した文書偽造事件で捜査に着手し、本命へたどり着く場合の文書偽造事件が入口事件です。
この状況では、今後、何が飛び出してくるかわからず、ライブドア絡みで、いろいろと身に覚えがある人々は、当分、寝られない日々が続きそうですね。
またしても、監査法人にまで捜査の手が及びましたが、捜査の結果如何では、「監査法人不信」がさらに強まる可能性もあるでしょう。

証券取引法違反事件の量刑事情

コメント欄で、実刑判決の可能性ということを言われている方がおられましたが、証券取引法違反という罪名だけで、実刑判決が宣告された例は、おそらく、ほとんどないと思います。他に起訴された犯罪も含め、実刑になった事例は、なくはない、と思いますが。
その理由として考えられるのは、
1 起訴された被告人が、企業経営者など、いわゆる「ホワイトカラー」である場合が多く、通常は前科がない
2 動機が個人の利得のためではなかったり、また、犯罪により得た個人の利得が少ない場合が多い
3 個人の利得が多い場合であっても、追徴の対象になり、剥奪されることになる
4 「個人の被害者」というものが観念できないのが通常(「市場や国民全体が被害者」という場合が多い)
5 被告人が、社会的制裁を大きく受けている場合が多く、その点が量刑上も考慮される
といったことではないか、と思います。
ただ、こういった従来の量刑事情が、今後も維持されるか、維持されるべきかは、別問題でしょう。特に、上記の4のように、「市場や国民全体が被害者」であるという場合、事件によっては、その被害には重大、甚大なものがあります。証券取引法が保護しようとしている法益(法によって守られる利益)の重要性、現在の日本、世界における健全な証券取引の重要性、といったことを考えると、従来、執行猶予に付されていたような事件であっても、今後は実刑を宣告すべき、という事案が増加する可能性が高いのではないか、と思います。
その意味では、今回のライブドア事件で、起訴される人々が出た場合に、裁判所が、従来の量刑相場を踏襲せず、踏み込んだ判断をする可能性はあると言えるでしょう。

サーバの押収

さる筋から、ライブドアが使用するサーバが押収された、という情報を聞きました。おそらく、ライブドア関係者が使用する社内メールに関するサーバが押収されたということでしょう。
ライブドアのサーバに、どの程度メールが残る仕様になっているのか、よくわかりませんが、捜査の手法としては、メールが重要な証拠である以上、サーバを差押さえ、残っている情報を検証するというのは、当然、踏むべきプロセスと言えると思います。
また、この点はなかなか理解されていない面がありますが、捜索・差押には、徹底して行うことにより、「証拠を確保する」という目的だけでなく、「証拠がないことを確認する」という目的もあります。
例えば、知能犯関係の捜査では、捜索先で、何も書いていない手帳があれば、何も書かれていなくても押収するのが通常です。何も書いていない手帳からは、何かがわかるということはありませんが、それを押収せず被疑者等の手元に残しておくことで、後にいろいろな書き込みがされて、犯罪事実認定を阻害する証拠にされてしまうおそれもあり、「手帳に何も書かれていなかった」ということ自体を証拠化するため、押収しておくわけです。
また、本来、残っているはずの証拠が、不自然に残っていない、ということが確認されれば、残っていない部分で、何らかの「まずい」内容があったという強い推定が働きますから、その後の捜査の上で、かなり役立つということも十分あり得ます。
ライブドアに対する捜索・差押も、上記のような観点から、幅広く徹底的に行われている可能性が高く、サーバの押収も、そのような観点も踏まえた上で見る必要があるでしょう。
(この件、某テレビ局から取材の申込がありましたが、顔出し取材は基本的にお断りしているので、ということで辞退しました。どうも済みません。>某テレビ局)

ライブドア>押収メール10万件 消去データも復元 地検
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060118-00000064-mai-soci

ライブドア宮内取締役、辞任の意向・株取引「違法性ない」


http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060117AT2E1702417012006.html

宮内氏は「堀江は本件の買収はわかっていない。法的な責任はない。あるとすれば私」との見方を示した。

「あるとすれば私」というのが、意味深長ですね。
あくまで一般論ですが、組織犯罪の容疑で捜査の対象になっている場合、対象となっている人々としては、できるだけ最小限度の犠牲で事を済ませたいと考え、いろいろと対応策を検討するものです。
可能であれば末端のメンバーの独断でやったと逃げ、それで済まなければ、中間管理職の責任までで何とか食い止め、それでも食い止められなければ、幹部の中で誰かが一手に責任を引き受けてそこで打ち止めにする、といった、様々な対応策が検討されがちです。
その一方で、例えば会社であれば、社長とか会長などといった最高幹部の辞任などを早めに世間に公表するとともに、捜査機関にもその旨伝え、捜査の幕引きを「陳情」する、といったことも行われます。その際、世上、よく言われるように、大物ヤメ検が動く、ということも、ないわけではありません。
捜査を徹底的に行おうとしていても、組織の上層部への突き上げ捜査もどこかで限界に突き当たりがちであり、また、与えられた時間も有限である上、上記のような「泣き」も入り、一定の成果が出たと判断された時点で、そろそろこの辺で終わりに、というムードに、次第になってくるものです。
水面下での様々な動きを経る中で、事件は、結局、落ち着くべきところに落ち着いてきますが、今回のライブドアの事件は、どの辺で落ち着くことになるのか、興味は尽きません。