ジャーナリストの常岡浩介氏に旅券返納命令 本人は拒否

ジャーナリストの常岡浩介氏に旅券返納命令 本人は拒否(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

常岡さんは1月半ばにイエメン取材を試みた際、経由地のオマーンで入国が許可されず、日本に帰された。旅券法は、渡航先の法律によって「その国に入ることを認められない者」には旅券の返納を命ずることができるとしており、返納命令書ではオマーンへの入国禁止の件が理由となっていた。

 手元に、

旅券法逐条解説 (有斐閣コンメンタール)

旅券法逐条解説 (有斐閣コンメンタール)

 

があったので、旅券返納命令の根拠となっている、旅券法13条

十三条 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
(以下略)
 
 

の、特に1項1号の解説を読んでみたのですが、

本号は、渡航先国の利益を考慮に入れているものではなく、また、現行法において

は、特定の場合を除き渡航先は包括記載となっていることでもあり、実務において

は、主として、外国における犯罪により刑に処せられた事実又は何らかの理由で外国

から強制退去処分を受けた前歴の有無及びその間の事情と、本人の意図している渡航

内容等を総合的に判断して、本号を適用する必要があるかどうかを慎重に決定する取

扱いとしている。

 

 とされています。旅券返納命令を定める旅券法19条でも、「旅券を返納させる必要があると認めるときは」と定めていますから、「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない」ことを理由とする旅券返納命令は、特定の渡航先だけでなく全世界の国へ渡航をできなくさせて、国民の海外渡航の自由を奪う結果になることに鑑み、かなり強い必要性が求められると考えるべきでしょう。その意味で、上記の記事にある旅券返納命令の正当性には大いに疑問を感じるものがあります。渡航先の国で入国を拒否される、ということは、ありがちなことであり、そこを捉えて、外務省が旅券返納命令を恣意的に出せることになれば、国民の海外渡航の自由は大きく制限されることになってしまいます。常岡氏という特殊な人物の例外的なケースと、簡単には片付けられないものがあると思います。