- 作者: 岡田啓介,岡田貞寛
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2015/02/21
- メディア: 文庫
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先月、鈴木貫太郎記念館を再訪したこともあり、2.26事件当時の首相で襲撃されたものの辛くも死を免れた岡田啓介の、この回顧録を読んでみました。
2.26事件当時、間違って義弟が殺害され、首相官邸の押入れの中に隠れて脱出したことは有名ですが、本人の語るところは実に生々しく、当時の緊迫した状況が臨場感を伴って感じられました。それ以外にも、海軍軍人として上り詰めた後に政界入りした経緯や政界での状況、早期終戦を目指して動いていた様子などが、赤裸々に語られていて、読み応えがありました。
こうした海軍の良識派については、最近は、従来の揺り戻しなのかネガティブに語られがちな傾向がありますが、やはり、戦争回避、早期終戦へと動いていた立場、役割といったことは歴史的事実として見る必要があるでしょう。終戦時の鈴木貫太郎内閣にとって、重臣で昭和天皇の信頼が厚かった岡田啓介の存在には、後ろ盾として大きなものがあったと推測され、こうして残った回顧録には貴重なものがあるように感じました。