袴田事件 東京高裁、再審認めず

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180611-00032330-houdouk-soci

東京高裁は11日、「地裁が認めたDNA鑑定の手法は確立しておらず、科学的に信頼性が十分でない」という理由で決定を取り消し、再審請求を棄却した。
そのうえで、袴田元被告の健康状態などを考慮し、「決定が確定する前に刑の執行停止を取り消すのが相当とは言い難い」と示した。

決定が入手できたので読んで見たのですが、地裁で再審開始決定の有力な根拠となったDNA鑑定の信用性が否定され、確定判決の証拠構造が重視された内容になっていて、再審請求人側としては、今後の対応がかなり厳しいのではないかという印象を強く持ちました。
袴田事件確定判決の証拠構造では、自白には重きが置かれておらず(かなり問題のある取調べが行われたことが裁判所にも意識されていたのでしょう)、味噌タンクから発見された、犯行当時の着衣とされるものなど、複数の状況証拠に依拠していて、味噌タンクにあったという衣類に捏造疑惑があるなど、個々の証拠には疑問が差し挟まれているものの、全体としての証拠構造がそれなりに強固であるという特徴があります。地裁段階では、そこが一旦は崩れましたが、再び元に戻ったのが今回の高裁決定でしょう。
強い批判は浴びていますが、確定判決をなぞっているだけに、高裁決定の理由にはそれなりに強固なものがあり、最高裁でさらにこれが覆る可能性は、私はそれほど大きくはないのではないかと感じています。
再審請求人、弁護団としては、「疑わしきは被告人の利益に」の観点から、本件の証拠構造が、実は、脆弱な個々の証拠から成り立っていることをきめ細かに特別抗告審で訴えていく必要があるでしょう。