東京弁護士会の会報誌「LIBRA」3月号52ページで、泉徳治・元最高裁判事が、中野次雄先生について、司法研修所の刑事裁判教官当時の思い出を語られていて、既に亡くなって20年近くになる中野先生のことが、私にも懐かしく思い出されました。
私が昭和58年(1983年)に早稲田大学法学部に入学した当時、中野先生は、大阪高裁長官を退官後に早稲田大学法学部客員教授であったのも既に退職されて(その後、北海学園大学教授であったと記憶しています)、当時あった早稲田大学法職課程教室で講師をされていました。私は、1年生の時に、中野先生の刑法総論の講義を聴きました。
教科書は、
が指定されていましたが、私は、当時の司法試験受験生がよく読んでいた大塚仁・刑法総論を読みながら講義を受けていて、中野先生も、講義の中で大塚説を紹介したり批判したりしながら進められていたような記憶があります。上記の記事で、泉氏は中野先生について「司法省刑事局や陸軍司政官の勤務歴を全く感じさせることのない温厚な人格者であった。」と振り返られていますが、ちょっと微笑んだ感じで淡々と、懇切丁寧に講義を進められていたその姿が今でも脳裏に蘇ります。私が、刑法というものに興味を感じるようになった切っ掛けになったのが中野先生の講義でした。録音もしていなかったので、もう講義を聴くことはできないのですが、また聴いてみたい気がします。
その後、私は、大学4年生の時に司法試験に合格し、法職課程教室がやってくれた口述の模擬試験を受け、その際、刑法担当が中野先生でした。受験生は2人1組で受け、一緒に受けたのが、テレビなどによく出ている北村晴男氏(現弁護士)であったのを覚えています。どういう質問であったかは覚えていないのですが、勉強している大塚説で一生懸命答えて、それを中野先生が、じっと聞いて、最後に、「それでいいんですかね」と、ちょっと不満そうな感じで言われた、その場面を覚えています。ちなみに、口述模試で手形小切手法を担当されていたのが、平山正剛・元日弁連会長で、口述への臨み方を懇切丁寧に教えていただいたのが忘れられません。
司法修習生として修習中に、中野先生の
- 作者:中野 次雄
- メディア: 単行本
を読み、理論と実務の両方に精通した立場から論じられた内容がかなり勉強になって、こういう実務家になりたいものだと思いましたが、到底無理なまま現在に至っています。この本は、今の司法修習生や若手法曹にも是非読んでみてほしいと思います。
こういったことを、泉氏の思い出から思い出していました。