ミッドウェイ海戦・日本の敗因

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を久しぶりに観て、手近にあった、読みかけの

ミッドウェー海戦「運命の5分」の真実

ミッドウェー海戦「運命の5分」の真実

の中の最後にある「第8章 アメリカの戦史家の評論」「第9章 ミッドウェー海戦を考える」を読んでみました。
著者の左近允氏は、

1 山本長官が海戦の前に得ていた米艦隊の動きについての情報を機動部隊に知らせていなかったこと
2 南雲長官が、艦載機の半数は対艦攻撃に備えよという山本長官の指示に反したこと

を、「二つだけ挙げるとすれば」として(これだけが敗因ではない、という趣旨だと思います)挙げています。
私は、さらに1つ付加するとすれば、作戦目的の曖昧さ、米機動部隊を徹底的に叩く重要性の認識が低かったことを挙げるべきと感じています。山本長官や聯合艦隊司令部、少なくとも山本長官としては、ミッドウェイ島攻略により米機動部隊をおびき出し、この際、徹底的に叩いて撃滅し、太平洋上における優位を確保することを目指していたと思うのですが、南雲長官の指揮は、ミッドウェイ島の第2次攻撃にこだわったり、索敵に徹底を欠き米空母の発見が著しく遅れるなど(空母は出てこないという甘い見方があったようですがミッドウェイ島の攻略よりこちらのほうが重要という明確な認識を持つべきであったのは明らかでしょう)、どっちつかずのふらふらとしたものに終始していて、そこを突かれることで大敗北に終わってしまっています。左近允氏が挙げる、上記2の敗因は、南雲長官が米機動部隊を徹底的に叩く重要性を的確に認識していなかったことに起因するものと言えるように思います。
そして、その背景には、聯合艦隊司令部と南雲司令部の間の、意思疎通の不十分さ(左近允氏指摘の上記1の敗因もその現れと見ることが可能です)があるとも思います。確か、半藤一利氏も指摘していたと記憶していますが、山本長官は、他人に対して自らの意図を十分に説明するというところに欠けるものがあり、特に、好まない相手にはその傾向が強かった、とのことで、海軍内の艦隊派、条約派という色分けの中では艦隊派に属していた南雲長官に対し、条約派に連なる人脈の中にいた山本長官は、南雲司令部に、海戦前、作戦目的を十分に説明、理解させておくことに欠けるところがあった、そこに大敗北へとつながるものがあったと思わざるを得ません。
戦争以外でも、様々なプロジェクト等で、こうした問題、それに起因する失敗は起き得るもので、ミッドウェイ海戦は、今なお学ぶべき教訓を提供し続けている、ということを感じます。