犯罪論の基本問題・大塚刑法学の検討

犯罪論の基本問題

犯罪論の基本問題

大塚刑法学の検討 (1985年)

大塚刑法学の検討 (1985年)

大塚仁先生による「基本問題」について、中山研一先生(ご冥福をお祈りします)が批判的な検討を加えたのが「検討」です。
私が早稲田大学で学び、司法試験受験準備に忙殺されていた当時、早稲田大学法職課程で中山先生が集中講義をされ、それが元になって「検討」が出たことは知っていたのですが、講義の時期が曖昧だったのが、本の前書きで、昭和60年3月のことであったことがわかりました。今はない、旧8号館の1階にあった大教室の前で、今、東北大学民法の教授になっている小粥さんがいて、中山先生の講義を聴いているところだがおもしろい、と言っていた場面を、なぜか覚えていて、今でもそこだけが思い出されます(その後、小粥さんは、刑法を藤木説で勉強して合格したと言っていて、珍しい人がいるものだと思った記憶があります)。昭和60年は、私が初めて司法試験を受けた年で(その年の8月に日航ジャンボ機が墜落したのですが)、3月は、択一試験の準備で忙しく、講義を受ける余裕がなかったものと思いますが、今振り返ると聴いておきたかったと悔やまれます。「検討」は、出た際に、すぐ買って、ずっと持っていたのですが、今の事務所に移る際にスペースの関係でまとめて蔵書を処分した際に売却してしまったので、古本で買い直しました。
今、改めて「検討」を読んでみると、大塚説(団藤説を含め)に対し、その依って立つ基本的な思想の部分から根本的な批判、検討が加えられていて、刑法というものを考える上で、重要な対立点が、「基本問題」「検討」を併読することで、くっきりと浮かび上がってくるように思います。刑法がわからなくなり迷路に入り込んでいるような人は、両書を併読してみることで、今に至る議論の流れの源流のような部分に触れ、見えなかった部分が一気に見えてくるという効果が期待できるのではないかという気がします。ともに、元が学生に対する講義なので、話し言葉で書かれ読みやすく、わかりやすい内容になっています。