ウイルス作成罪:刑法に新設へ…サイバー犯罪に歯止め

http://mainichi.jp/select/biz/it/news/20110617k0000m040100000c.html

新設される「ウイルス作成罪」(不正指令電磁的記録作成罪)はコンピューターウイルスを「意図に沿った動作をさせず、不正な指令を与える電磁的記録」などと定義。研究など正当な理由が無いのに作成したり、ばらまいた場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、所持・保管した場合は2年以下の懲役または30万円以下の罰金とする。

また、刑事訴訟法改正案は、捜査機関が電子データを証拠収集するための法的手続きを整備。(1)プロバイダー(接続業者)にデータ提出を命じて差し押さえる制度(2)記録が保管されたサーバーからのデータ複写を認める制度(3)プロバイダーに通信履歴の保管を最長60日間求める制度−−などを新設する。

上記のようなウイルス罪は、以前からその必要性が指摘されていたにもかかわらず、共謀罪と一蓮托生状態でお蔵入りになっていたもので、立法が遅すぎたと言えるでしょう。確かに、本来、取締の対象にすべきでないような、フリーソフトのバグを放置するような行為への拡大適用の恐れがまったくないわけではありませんが、そういった恐れは解釈の厳格化、慎重な運用により回避すべきもので、まずは令状を発付する裁判所が締めるべき蛇口をきちんと締める感覚で事案に即した判断をすることが必要ではないかと思います。
刑事訴訟法の改正案にも、様々な批判が浴びせられていますが、法文を読めば、「監視」という性格がないのは明らかで、従来、法律に規定がないまま、捜査機関からの要請やプロバイダ等の協力といった、「事実上」のベースで行われていたこと(データの保全要請とか差押えにあたっての電磁的記録の有体物化など)について、プロバイダ等の側に「義務」は課さないまま法律により手法を明確化したという性格が強いと言えるでしょう。批判のほとんどは、捜索差押というものに本質的に内在する、捜査機関による濫用の恐れに関するもので、そういった濫用は、令状審査の厳格化といった方法で抑制されなければならないのではないかと思います。
問題は、むしろ共謀罪のほうで、国際組織犯罪防止条約に基づく国内法整備の必要があるという大義名分を振りかざして、法務省が、「新共謀罪」のようなものを持ち出してくる可能性もあり、今後も注意深く事態を見て行く必要があると思います。

追記:

高名な刑事法研究者のご指摘で、サイバー犯罪条約国際組織犯罪防止条約と訂正しました。ご指摘ありがとうございました。