http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008033190061557.html
弁護士過疎地域での裁判では都市部から弁護士が出向く。距離の離れた地検の現地支部には頻繁に行けないため、証拠の十分な閲覧ができず、全部コピーせざるを得ない事情がある。膨大な量になることが多く、赤字になるケースも。
こうした国選弁護人には、法テラスがコピー代を全額負担する特例処置を実施。愛知地方事務所管内では、名古屋地裁半田支部で行われる事件に名古屋などから国選弁護人が行く場合が対象だった。
しかし昨年11月、法テラスの本部が特例措置廃止を通達。愛知地方事務所は、国選弁護人のなり手がいなくなると反対したが方針は変わらず、同月、石井副所長が抗議の辞任をした。
本部は「報酬の規定改正で、出張手当が出るようになったのでコピー代はいらないと考えている」としている。
コピー代の問題は、以前から、国選弁護で繰り返し問題なっている点で、弁護士としては、業務に必要な経費である以上、全額かそれに近い金額を負担してほしいと希望し、裁判所(法テラス以前)や法テラスは、できるだけ負担せず、弁護士に負担させて支出を減らしたいと考えるので、この種のトラブルが生じてきます。
記事では、「出張手当が出るのでコピー代はいらない」という法テラス側のコメントが出ていますが、弁護士の立場から言うと、出張手当よりもコピー代を出してほしい、というのが実感ですね。
裁判所や検察庁の感覚では、記録は常に自分の手元にあり、必要に応じて取り出して見れば良い、ということになりますが、弁護士の場合、記録を手元に置いておくにはコピーという形しかなく、特に刑事事件の場合、身柄拘束中の被疑者、被告人と接見する際には、記録を手元に置きつつ打ち合わせをする必要性が高いことも多いものですが、そういった事情は、裁判所や検察庁の感覚ではわかりにくいと思います。法テラスは、そういった官僚的な感覚を引きずっているのではないか、という印象を、この記事からは受けます。
裁判員制度のPRに女優を使うなどして億単位の金を出し、業者の言いなりのまま過大な支出をしても、弁護士が切実に要求するコピー代はケチって出さない、というのが、日本の裁判制度の実態である、ということでしょう。