弁護士の資質や能力、それらを知る手段等について

私自身、弁護士になって、まだ5年ほどなので、大きなことは言えませんし、わからないことも少なくありませんが、弁護士になる前は、検事として、11年余りの間、反対側から弁護士を見る立場でもあったので、上記の問題については、それなりに思うところがあります。
現状で、問題と思われるのは、
1 弁護士に関して開示されている情報が非常に少なく、また、入手できる情報にも限界、偏りがあって、一般国民にとって、どの弁護士に相談や依頼をすべきか非常にわかりにくい
2 資質や能力、人間性や人格といったことに問題がある弁護士であっても、適切に排除するシステムがなく、抜本的な対策が講じられないまま問題が深刻化してしまうことがある
3 特定の分野を専門とする弁護士の養成体制が十分でなく、かつ、弁護士が何を得意としているかが非常にわかりにくい
といったことではないかと感じています。上記の1と3は、重複する面があります。
1については、最近、週刊誌等で、「勝てる弁護士」などといった記事を見かけるようになりましたが、噂とか一面的な評価等を寄せ集め、センセーショナルに書き立てた記事が多く、私から見ても、とても参考にはならないだろうな、というものが少なくありません。きちんとしたことをやろうとすれば、外国で行われているように、専門性、中立性を持った機関が、厳正公平に弁護士に関する評価を行い、一種の「格付け」のようなことを行って、一般国民がその結果を気軽に利用できるようにすべきでしょう。自分の評価に不服がある弁護士が、異議申し立てや反論を行えるといった手続も保障しておく必要があるでしょう。最初から、いきなり「使える」制度にはならないと思われますが、徐々に実績を積み重ねて行くことにより、「使える」制度にして行くことは十分可能と思います。
2については、現状では、定期的に弁護士の資格審査を行って、不適格者を排除するという仕組みがないので、かなりの抵抗は予想されますが、そういった仕組みは導入すべきだと思います。裁判官や検察官の場合は、どこまで実効性があるかはともかく、一定期間を経る毎に適格性をチェックする仕組みが既に存在していますから、弁護士だけそういった仕組みを設けないことを正当化することは極めて困難でしょう。やはり、第三者的な機関を設けて、そこが各弁護士について広く情報を収集し、自ら調査も行った上で、資質や能力、人格や人間性等に問題がある「不適格」弁護士は、大きな、深刻な問題になる前に、未然に排除する必要があると思います。
3については、既に指摘したように1とも関連しますが、現状では、弁護士の「専門」は、各自が勝手に名乗りたい放題で、何ら客観性が伴っていません。専門性を培える体制(知識や経験の共有、各種研修制度)を整備した上で、医師の世界のように、一定の経験とか知識といったものを審査し、特定の分野に関する「専門弁護士」を名乗ることを許可する制度がないと、一般国民は、弁護士の「自称」や、噂、風評の類の不確か、曖昧な情報でしか判断ができず(現状が正にそうです)、困惑するばかりだと思います。
ただ、こういった問題意識を持つ弁護士は多くても、弁護士や弁護士会自らの力で、そういった点に関する大きな改革を行うことは、残念ながら、かなり難しいと思います。今後の、弁護士の大幅増加等の外部的要因が大きく作用することにより、改革の方向へ向けて少しでも動いて行くことを、個人的には期待しています。